研究課題/領域番号 |
23K12108
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
黄 イク 立正大学, 経済学部, 特任講師 (10814808)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 怪異譚 / 本草綱目 / 春渚紀聞 / 志怪小説 / 笑話 / 落語 / 昔話 / 煉丹術 / 医学書 / 怪異 / 蘆川桂洲 / 類書 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は日本近世前期の医学書を中心に、医学資料に記録された中国の志怪説話を抽出し分析した上、これらの説話が中国と日本の諸文芸作品における展開を辿りつつ、医学資料が怪異の記録である志怪を用いて、医学知識を記述した意識と文化的背景を考察する。具体的には、元禄期に活躍した医師蘆川桂洲が著した『病名彙解』(貞享三年(1686))、『袖珍医便』(元禄三年(1690))などの通俗的医書に焦点を当て、近世前期の社会に広く浸透した中国の志怪説話を整理し、中国と日本におけるその言説の変容と展開を文献に基づいて究明する。
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研究実績の概要 |
本研究は日本近世前期の医学書を中心に、医学資料に記録された中国の志怪説話を抽出し分析した上、これらの説話が中国と日本の諸文芸作品における展開を辿りつつ、医学資料が怪異の記録である志怪を用いて、医学知識を記述した意識と文化的背景を考察するものである。今年度は中国宋代の筆記『春渚紀聞』や明代の本草書『本草綱目』などに記録されている、人間を水に溶かす薬草についての説話の中国と日本における展開を考察した。中国の説話ではこの類の薬草の金属を黄金に変えることができる特性と、人の血肉を溶かす毒性の両方が強調され、唐宋以来の筆記小説や志怪小説、さらに本草書、医学書に記録が見られ、本説話の怪異譚と煉丹術の伝承としての両面性が確認できるが、日本では江戸時代にこの説話は煉丹術の伝承としての一面が削ぎ落とされた形で怪談として受容され、笑話、落語、昔話といったエンターテインメント性豊かなジャンルで広く流布していたことを明らかにした。 以上の研究内容について、東アジア文化交渉学会第15回国際学術大会のパネル「日本にける中国医学知識の伝来と文化生成」、第156回和漢比較文学会例会(東部)、AAS(the Association of Asian Studies) 2024 Annual Conferenceのパネル「Interactions between Scholarly and Popular Knowledge in Early Modern East Asia」で口頭発表を行い、論文をまとめているところである。 このように、医学知識としての中国の怪異譚が日本に伝わり、怪談、笑話といった娯楽を通して大衆に楽しまれ、通俗化していく経路に改めて注目すると、中国と日本における医学と文学の知の捉え方の異同を考える新しい切り口に繋がると考え、今後はさらに考察を深めたいと思う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、元禄期に活躍した日本の医師蘆川桂洲の『病名彙解』(貞享三年(1686))、『袖珍医便』(元禄三年(1690))を中心に取り上げ、近世前期の日本の医学書における中国の志怪小説の受容例を分析する計画であったが、研究を行うに当たってより広い範囲で中国と日本の医学資料を取り扱う必要があったため、今年度は中国の本草学・医学資料に記録されている怪異譚の日本における受容例を考察し、研究成果を公開した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は医学と文学の知のネットワークという視点で続けて中国と日本の医学資料に見られる志怪説話を抽出し、その受容の過程と特徴を整理し、これらの説話が小説、随筆、絵巻、浮世絵など日本の文芸作品に及ぼした影響を含めて総合的に考察し、両国の病に対する理解や怪異観の異同を分析する。 次年度は『病名彙解』、『袖珍医便』など日本の医学書の主要な伝本の書誌調査を行い、その流布の実態を整理した上、これらの志怪説話が日本の医学、文学およびその周辺作品に受容された事例を考察し、比較研究を行う。
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