研究課題/領域番号 |
23K12135
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
洲崎 圭子 お茶の水女子大学, グローバルリーダーシップ研究所, 研究協力員 (40869294)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 女性作家 / ジェンダー / 移動 / 言語 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ラテンアメリカ地域にルーツを持ち、同地域を往来する女性作家たちの作品について、移動・言語・ジェンダーの観点から考察することにより、作品に表れた社会や文化に対する境界意識が交錯する状況を明らかにする。1970年代、ラテンアメリカ文学の<ブーム>と呼ばれた時期には、男性作家のみが組み込まれた。21世紀の現代、自らの意志で海外に居住する作家は多く、母語ではない居住先の言語も使用して複数言語で執筆する者が増えている。男性作家の正典に埋もれがちな作品を、国民文学の範疇に収めることなく分析することにより、新たな文学研究の知見の一端を示す。
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研究実績の概要 |
今年度は、文献資料収集のためにメキシコシティを訪れた。メキシコ大学院大学にかつて客員研究員として籍を置いていたこともあり、当時の指導教官らを訪ねて依頼したところ、同大学附属図書館への入館証を発行してもらえたことから、電子データをはじめとした膨大な資料をダウンロード/コピーすることができたことは大きな成果であった。その他、留学時代から所属していたフェミニズム文学批評研究会の会員に連絡を取り、定例会は出席できなかったものの、現地の研究者らと懇談の機会をもつことができた。最新のラテンアメリカにおける文学状況や批評動向などについて意見聴取を行い、多くの情報を得ることができたことは、対面ならではの成果であったと考える。メキシコにおいては、ラテンアメリカ全域にわたるフェミニズム批評/ジェンダー論の文献や新刊図書がまとめて入手可能であることを改めて確認した。 アルゼンチン生まれの作家シルビア・モロイについては、ジェンダー史学会で口頭発表を行った。作家が、フランスで学位取得後、米国に居を定めることとなった理由としては、1970年代後半からはじまった軍政の影響をみることは困難なことではないが、同時に、米国において第二波フェミニズムの大きなうねりを目の当たりにしたことも要因の一つではないかと結論づけることとなった。所属先の研究会チーム主催の公開研究会においてモロイをはじめとしたラテンアメリカの女性作家に関し、20世紀後半から現在に至るまでの活動状況について、口頭発表を行った。2020年代になって以降、ブッカー国際賞、全米図書賞翻訳部門など、全世界的傾向を得て多方面でラテンアメリカの女性作家たちが多く読まれ、ノミネートされる状況があることが確認できた。ラテンアメリカ地域専攻や文学以外の分野からの研究者らと新しい視点からの意見交換ができたことで、別の視点が拓かれることとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究計画の初年度として、海外に出向いて資料収集が可能となったことから、予想していなかった多くの文献を入手することができた。メキシコにおいては、資料収集とともに関係各所において情報収集を行うことも可能となったことから、例えばチリの異性装男性作家Pedro Lemeberが、パフォーマーとしての活動のみならず、2001年に小説Tengo miedo toreroを上梓していたことが判明したため、急きょ考察対象とすることとした。また、アルゼンチンのCamila Soza Villadaは、トランスジェンダーとしての半生をエッセイにつづっていることがわかり、それらをまとめて入手することができるなど、予定していた以外の成果を得られていることから、進捗状況として「おおむね順調」とした。さらに、この研究で研究対象としているシルビア・モロイについては、口頭発表以外にも、『ジェンダー事典』において「ラテンアメリカ文学」の項を執筆する成果につながった。
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今後の研究の推進方策 |
アルゼンチンのみならず、メキシコにおいても同性愛をテーマにした作品が1980年代後半に出版されていることから、最近になってそれら作品の再評価が積極的にされるようになっている状況に鑑み、作家が母国を追われて亡命した事情などと併せ、比較考察していくこととする。 1)文献の分析:メキシコにおいて収集し得た文献資料の他、現地で得た情報をもとに、新たに浮上した作家らの作品を精読する。シルビア・モロイは、小説家であると同時に、ラテンアメリカ文学・ジェンダー論の研究者でもあったことから、同地域の小説における自伝的要素について考察した当該分野では貴重ともされる論文集等を読み込み、関連する作品等も併せて収集・分析する。また、第一小説『束の間、囚われて』は同性愛の女性が主人公であったが、二作目の長編小説『ありふれた忘却』 は同性愛の男性を主人公に据えているため、これらを比較しつつ精読を行う。 2)研究成果の発表:精読を行った結果については、できる限り早い段階で、口頭発表の機会を持つことを予定している。
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