研究課題/領域番号 |
23K12140
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
坂口 周輔 愛媛大学, 法文学部, 講師 (30970412)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | マラルメ / ボードレール / ゴーチエ / 1860年代前半 / 芸術の自律 / ステファヌ・マラルメ / テオフィル・ゴーティエ / エドガー・アラン・ポー / ルコント・ド・リール |
研究開始時の研究の概要 |
フランスの詩人ステファヌ・マラルメ(1842-1898)は、若い頃、俗なる社会から切り離された超越的な美を探求し、1862年に発表したエッセー「芸術の異端-万人のための芸術」のなかで〈芸術の自律〉という理念を掲げた。ただしこれは、当時の時代思潮からの影響のもとで主張されたものではないだろうか。本研究は、この〈芸術の自律〉という理念の萌芽を、1850-1860年におけるテオフィル・ゴーチエ、エドガー・アラン・ポーそしてルコント・ド・リールのなかに探ることで、この時代に〈芸術の自律〉がいかに形成され、どのようにマラルメの詩学に影響を与えたのかを明らかにするものである。
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研究実績の概要 |
本研究における初年度は、マラルメとボードレールという二つの軸となる詩人に加えて、ゴーチエに関する研究を遂行することとなっており、まずはこれら三者に関する一次文献、二次文献を入手し、それらの読解や分析に多くの時間を費やすこととなった。 入手した文献のなかでマラルメに関する最新の研究書とボードレールに関するシンポジウムの記録や研究書を参照し、1860年代前半のマラルメに対するボードレールの影響を具体的に、そしてこれまでなかった新しい観点から論じ、研究論文として発表した。これは1850年から1860年にかけてのフランスの美学的問題に焦点を当てる本研究の土台をなすものである。 もう一つの具体的な成果としては、マラルメに関するシンポジウムでの発表が挙げられる。マラルメの詩学はポスト・ロマン主義として位置づけられると考えられるが、このマラルメの作品における〈出来事のあと〉という様相に注目するフランスの現代哲学者アラン・バディウによるマラルメ論を今回の発表で取り上げた。これは現代におけるマラルメ論を対象としているということもあり、本研究と直接結びつくものではないが、上記のようにマラルメの詩学における〈出来事のあと〉という点に注目することは、本研究が対象とする1850年~1860年がこの出来事そのものの時期に相当するという点において本研究と関連づけられると考えられる。 これらに加えて、いまだ研究成果として公開はできていないが、進めることのできた研究として、最新の研究を反映して編まれているオノレ・シャンピオン版のゴーチエ全集-詩篇(2022年刊)のなかに収められている詩集『七宝とカメオ』(1852年刊)を、その改訂のなされ方を含めて検討したことがある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究初年度は、テオフィル・ゴーチエの1850年から1860年頃までの活動を、とりわけ詩集『七宝とカメオ』の改訂と「芸術家」誌の主幹を務めた時期(1856-1858)に焦点を当てつつ分析するという計画を立てたが、これが「やや遅れている」理由として次の4点が挙げられる。 1.初年度ということで手続き上不慣れなことがあり研究の開始が遅れてしまった。 2.本研究と同時に、これと直接あるいは間接的に関係のあるマラルメ研究を行っていたため、ゴーチエ研究そのものに遅れが生じてしまった。 3.『七宝とカメオ』の改訂に関する研究を進めたが、これに関する文献をまだ精査することができずにおり、それが理由で研究成果を公表するまでに至っていない。 4.「芸術家」誌の調査をフランスの国会図書館で行う予定であったが、世界の情勢、物価高、円安などといった状況を鑑みて初年度は渡仏できておらず、予定していた実地研究を行えていない。 研究そのものにおいて時おり分析困難な事柄に出くわすという内在的な理由により研究が遅れているということもあるが、主なる原因は以上挙げた4点ということになる。
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今後の研究の推進方策 |
当初初年度に予定していた研究をより迅速に前進させることが主眼となる。具体的に言えば、『七宝とカメオ』の改訂の検討と、テオフィル・ゴーチエが1856年から1858年のあいだに主幹を務めた「芸術家」誌の調査である。このなかに〈芸術の自律〉と結びつく芸術観、とりわけヘーゲル哲学由来の観念論と、新古典主義由来のヘレニズムがどう関わってくるのかを分析していく必要がある。このことをフランスの国会図書館にまで赴き、現地調査する予定である。 さらに、以上の研究を、本研究2年目に予定していたエドガー・アラン・ポーのフランス受容研究に関連づけていくことになる。特にボードレールによるポーの受容(1852、1856、1857)は再検討するに値するものであり、この受容がいかにして〈芸術の自律〉観と結びつくのかを当時の思潮や社会状況と照らし合わせつつ分析していく必要がある。このことはボードレールによるゴーチエ論(1859)へと接続される。なお、ポー受容に関する文献はまだ入手できていないものも数多くあるので、昨年度に引き続き文献収集も行う。 以上が今後予定している研究内容だが、この成果を日本フランス語フランス文学会や日本マラルメ研究会などで発表していきたいと考えている。
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