研究課題/領域番号 |
23K12144
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
松浦 菜美子 関西学院大学, 文学部, 准教授 (10880247)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2029-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2027年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 叙事詩 / ユゴー / ジャンル詩学 / フランス近代詩 / ルコント・ド・リール / マラルメ |
研究開始時の研究の概要 |
叙事詩というジャンルが19世紀後半のフランスで批判的に継承され、新たな作品創造へと繋がり、近代詩の一部となる様を明らかにする。第二帝政から第三共和政初期はフランス革命やナポレオンの記憶が反すうされ、英雄や偉業のイメージが為政者によって利用される一方、匿名的な民衆が社会の主役となる。こうした時代に詩人は叙事詩の衰退を意識しながらも、なぜどのように叙事詩を試み、どのような新しい表現を得たのか。ユゴー『諸世紀の伝説』(1859)を導きの糸とし、ルコント・ド・リール、マラルメを取り上げることで、近代フランスに底流する叙事詩の夢を掘り起こし、フランス近代詩に新たな見方を提示する。
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研究実績の概要 |
令和5年度は産前・産後休暇及び育児休業の取得により7月30日より本研究課題を中断した。 令和5年度は研究課題の初年度であったため、研究を中断する前の4月から7月までは研究備品を揃えるとともに研究課題の中心となるユゴー『諸世紀の伝説』や彼の理論的テクスト(『クロムウェル』の「序文」、『ウィリアム・シェイクスピア』など)の日本から入手可能なエディションを網羅的に収集した。 それに並行して、ユゴー『クロムウェル』の「序文」を精読し、ユゴーのジャンル詩学を理解する作業を可能な限り進めた。そのさい、西欧文学におけるジャンル詩学の変容(とりわけ叙事詩/抒情詩/劇詩の三幅対の成立とドグマ化)を跡づけたジュネット『アルシテクスト序説』を踏まえながら、ドイツ・ロマン主義の直接的・間接的影響下でユゴーのジャンル詩学が形成されたこと、その一方で独自の歴史観のなかにそれが起きなおされていることを確認した。さらに詩における「物語性の排除」という主にマラルメの詩学を通してヴァレリーへと引き継がれた「純粋詩」の理念とジャンル体系の変革という文脈をドミニク・コンブ『ポエジーとレシ』を通して整理した。こうした作業は叙事詩をめぐるユゴーの理念・実践と19世紀後半のフランスにおける詩ジャンル体系の大きな変容の流れに位置づけ考察するための基盤となる基礎的作業である。研究課題の再開後はジャンル詩学の歴史的・理論的知見を一つの重要な枠組みとしつつ、たほうで、ユゴーの置かれた、より具体的な歴史的文脈を把握しながらユゴーの他の理論的テクストの読解を進めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
出産・育児にともない令和5年度は7月30日から研究課題を中断するという研究計画外のことがあったものの、令和5年度の7月までに進める予定だった作業はすべて実施することができた。すなわち研究課題を進めるための物理的な環境整備、ユゴーの一次資料の収集、ユゴーのジャンル詩学の解明に向けたテクスト分析である。育児休業からの復帰後に計画に沿って研究を再開できるところまで、作業と考察を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は年度途中に研究を再開し、令和5年度の8月から3月末までに実施する計画だった研究を進めていく。具体的にはユゴーの一次資料ならびに基礎研究の読解からユゴーのジャンル詩学と『諸世紀の伝説』連作の背景にある執筆動機・意図を解明することを目指す。研究中断により実施できなかったフランスでの資料収集は令和6年度の2月から3月に行う。なお今後は基本的に年度ごとの研究実施計画をおおむね一年ずつずらして実施していく。従って令和6年度は令和5年度の、令和7年度は令和6年度の研究実施計画をもとに資料の収集・読解と成果の公表を進めていく。
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