研究課題/領域番号 |
23K12148
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02050:文学一般関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
加藤 哲平 九州大学, 言語文化研究院, 助教 (70839985)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2027年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | キリスト教 / オリゲネス / ヒエロニュムス / エレミヤ書説教 / 翻訳 / エピファニオス / エウセビオス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、西洋古代の翻訳者ヒエロニュムスを具体例に、翻訳を独自の文芸活動と捉えることで、古代における翻訳の実態を明らかにする。従来、翻訳そのものが研究の対象となることは少なく、翻訳者は「不可視化」されてきた。しかし本研究はヒエロニュムスによるギリシア教父文学の翻訳を、原典を知るための二次的な道具ではなく、彼自身の翻訳の理論と実践を明らかにするための一次資料として分析する。理論面では、彼が翻訳について言及している著作から、その翻訳理論を読み解く。実践面では、具体的なテクストに基づき、原典と翻訳の相違を翻訳者の創造性の発露として積極的に評価しつつ、その意図を分析する。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、古代の翻訳作品を扱う本研究の中心的なテクストである、オリゲネスの『エレミヤ書説教』のギリシア語原典と、ヒエロニュムスによるラテン語訳を精読し、第1説教に関する日本語対訳を出版した。 第1説教は、エレミヤ書1:1-10を題材とした比較的長めの一作である。第1節から第16節まで、架空の論敵からの批判や質問に対してオリゲネスが応答する、ディアトリベーの形式が取られている。オリゲネスは寓意的解釈を活用しながら、エレミヤ書をキリスト教的に理解した議論を展開している。 日本語対訳では、ギリシア語からの日本語訳とラテン語訳からの日本語訳を比較できるように平行に配置した上で、とりわけギリシア語原典に対してラテン語訳が異なっている箇所では、ラテン語訳に基づく日本語訳に下線を引いた。それと同時に、ラテン語訳では省略されてしまい、ギリシア語原典のみに残っている箇所については、ギリシア語原典に基づく日本語訳に波線を引いた。このような作業により、原典と翻訳のテクスト上の差異が容易に判別できるようになった。 これまでの研究は、ヒエロニュムスによる翻訳上の改変を、ギリシア語原典の「濃縮」、「合理化」、「拡張」、「修正」、「(新しい要素の)導入」に分類して理解してきた。しかし、上記の作業をしていく中で、これらの分類には当てはまらないと思われる箇所が一定数見受けられた。そのような箇所を収集していくことで、従来の研究より一段深い分析が可能になる見通しがついた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度はオリゲネス『エレミヤ書説教』において、ギリシア語原典と、ヒエロニュムスによるラテン語訳の両方がそろっている全12説教のうち、第1説教の読解が終了した。第1説教は他の説教と比べると長大であるため、読解に時間がかかった。それゆえに、読解が終了した説教の本数は少ないが、全体量から見れば大きな成果といえる。今後は、精読および比較の作業を、他の説教(2、4、8、9、10、11、12、13、14、16、17)に関しても同様に行っていけば、研究機関内に十分に成果を上げることができると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、第1説教に対して行ったような、ギリシア語原典とラテン語訳との比較・読解の作業を、他の説教に対しても継続していく。現時点での見通しでは、2年目ですべての説教の読解を完了させたいと考えている。その後、3年目には読解の結果得られたデータを比較・分析する作業へと移り、その成果を説教ごとに論文としてまとめる。4年目には個々の説教の分析から得られたデータを統合し、『エレミヤ書説教』全体を対象とした議論へと練り上げていく。5年目には、そのようにして書いてきた論文を書籍としてまとめる。
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