研究課題/領域番号 |
23K12153
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小田 博宗 東京大学, 大学院総合文化研究科, 講師 (60974730)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 不定冠詞 / 類型論 / 名詞句構造 / 対併合 / 弱主要部 / 形態・統語・意味インターフェイス / 大規模随伴 / 生成言語類型論 / NP/DPパラメータ |
研究開始時の研究の概要 |
例えば英語では可算名詞の単数形は不定冠詞を必要とするが、現代ギリシア語やバスク語では不定冠詞を省略できる。本研究では、こうした不定冠詞の分布やその性質が様々な文法特徴と相関しているかどうかを、異なる地域・語族の複数の言語を比較することで明らかにする。その上で、そうした相関関係、すなわち不定冠詞が関わる文法特徴の言語間の違いを、最新の極小主義的統語論と呼ばれる言語理論において妥当な形で導出することを試みる。これにより、言語の記述と理論の双方を進展させていく。
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研究実績の概要 |
本年度の大きな収穫として、「名詞句からの付加詞の抜き出しが許されるのは可算単数名詞が不定冠詞を必要としない言語(不定冠詞を持たない言語を含む)」という一般化を得た。これは、研究が進んでいるインド・ヨーロッパ語族を中心に、複数の語族にまたがる言語から得られた一般化であり、今後更なる検証が必要ではあるものの、通言語的一般化として一定の妥当性があると言える。また、この一般化は先行研究における空目的語の可否に関する一般化と同じような言語の区分を持つものであり、不定冠詞が統語現象に関わるものであるという仮説を強力に支持する。 また理論面では、不定冠詞の非義務性が文法化の段階と関連し、それが外的対併合(External Pair-Merge)によって記述・説明可能であるという提案を行った。この提案は、不定冠詞のみならず、定冠詞や"I mean"のような挿入表現にも拡張できるものであり、近年の極小主義統語論の道具立てが通時的・共時的研究の双方に重要な貢献することができることを示唆している。これらのことは、複数の学会や論文で発表した。 さらに、この外的対併合の拡張として、Chomsky (2015)で提案された「弱主要部」という概念を精緻化し、外的対併合によって弱主要部がより生産的に形成可能であるとするという提案を行った。この提案は大規模随伴現象に関する新たな一般化を導出し、さらに一致操作そのものをUGから排除することができる。 このように、本年度は記述的研究に端を発し、理論的にも様々な提案を行い、その拡張や帰結について広く検討した。これらの成果は、複数の論文や学会で発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上述のように、記述面、理論面で様々な収穫があり、当初の想定以上の成果があった。学会やシンポジウムでの発表、論文発表など、研究成果の発表も進んでいる。また、これらの研究を軸に、いくつかの共同研究も始まっている。今後も記述研究と理論開発の双方に取り組んでいくが、手を広げすぎて一つ一つが中途半端にならないよう注意したい。
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今後の研究の推進方策 |
今後も新たな記述的一般化に繋がるデータを探し、またこれまで定冠詞やその性質が関わるとされていた現象についても、不定冠詞の観点から再検討する必要があると感じているため、これを遂行していく。文法化の程度と不定冠詞の性質との相関関係についても、音韻・形態・統語・意味の観点から総合的に見ていく。その際に外的対併合と弱主要部の観点からさらなる有益な知見が得られるかどうかを検討していく。
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