研究実績の概要 |
本研究は、ドイツ語の状態受動文における過去分詞の素性「形容詞性 vs. 動詞性」という未解決の学術的な問いを出発点とする。先行研究のように動詞を恣意的に限定せず、網羅的に調査することで、母語話者が状態受動文の文法性を判断する際の拠りどころとなる意味的特徴を特定することが本研究の目的である。 初年度は、Levin(1993)による動詞の意味分類を参考に、まずは調査対象となる動詞群(Verbs of Combining, Attaching, Separating, Disassembling, Change of Cutting, Creation, Transformation, Obtaining, exchange)を選んだ。次に、これらの動詞群に属すると考えられる動詞を辞書(DUDEN)から収集し、その動詞の過去分詞が用いられている4つの構文(現在完了形・動作受動文・状態受動文・コピュラ構文における過去分詞形形容詞)をコーパス(COSMAS II)で収集した。ドイツ語の状態受動文と過去分詞を持つコピュラ構文の表層構造は同じであり、ドイツ語母語話者にとってもその判別は難しい。そのため、とりわけ判別が難しい状態受動文とコピュラ文の仕分けに注意しながら意味上の差異を考察した。現時点では、Maienborn(2007, 2009)が状態受動文における過去分詞が表す結果状態はあくまで行為としての一時的な状態であるとの分析結果を提示しているが、それだけでは状態受動文の生成の可否は判断できないことが判明した。この調査結果は2024年度に論文として発表予定である。
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