研究課題/領域番号 |
23K12175
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
柴田 香奈子 創価大学, 公私立大学の部局等, 助教 (80845446)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 修道院手話 / フィールドワーク / 厳律シトー会 / 共同生活 / カトリック / 手話 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、修道院手話のルーツに注目し、言語発達のプロセスについて社会言語学的に検討を行うものである。本研究では、社会言語学で重視される参与観察を行い、各修道院に保管されている文献を収集し整理する。修道院手話のルーツについては、修道士への聞き取りと収集できている語彙リストを中心にして検討を行う。言語発達のプロセスについての検討は、これまでの申請者が実施してきた研究手法を踏襲し、現場で使用されている修道院手話を撮影して分析する。修道院手話の先行研究の成果も十分に検討した上で、修道院手話が「訳ありの人たちが、単なるおしゃべりに使用するジェスチャーのようなもの」ではないということを明らかにしたい。
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研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、修道院手話のルーツに注目し、言語発達のプロセスについて社会言語学的に検討することである。当該年度は、これまで修道院手話のルーツ(が十分に整理されていない状況を鑑み、ドイツ・オランダ・日本の修道院でフィールドワークを実施して資料収集を行なった。それぞれの修道院で貴重な一次資料を収集できたが、さらに質的・量的にも拡充したデータ収集を目指して、現在も調査を継続している。 研究成果は、ドイツ・オランダ・日本の修道院で共通の問題を抱えながら、その問題に対する考え方や取り組みが違っていることがわかったきたことである。これまでに明らかになった共通の問題というのは、ドイツと日本で顕著な「人口減少」とその中でも現代人の「宗教離れ」である。これらの問題を背景に修道士数は激減し、その結果として修道院としての維持が難しくなり多くの修道院が閉鎖されたり合併したりしている。当該年度の調査を通して、ドイツ・オランダ・日本の修道院では、これらの共通の問題に対する考え方が異なっていることがわかってきた。考え方が違うということは、その対応策も異なってくる。例えばドイツの修道院では維持費のかかる大きな修道院から管理しやすい小さい修道院に移り住み、少人数でも無理なく効率的な修道生活が送れるように共同体の規模縮小に舵を切っている。一方、オランダの修道院では、広大な修道院の敷地を樹木墓地という新し概念の墓地を一般向けに売り出し多くの収入を得ている。経営規模の拡充に舵を切っているのである。こうした異なる取り組みの違いの中に修道院手話への認識・解釈の違いが見えてきた。具体的には修道院手話のルーツについての教育や継承方法、関係資料の保存方法などである。この点は当該年度の大きな成果になるので、次年度はそれぞれの修道院で継承されてきた修道院手話のルーツを丁寧に整理して、社会言語学的な分析につなげたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は、就職活動に予想以上に時間がかかったために多少遅れている。前任校の任期終了に伴い、次のポジションを獲得する必要があり就職活動を行なった。就職活動では、応募先のリサーチや応募書類の作成に予想以上に時間がかかった。また就職活動を始めてから採用が決まるまでに10ヶ月かかったので、研究するための時間を確保するのが難しかった。また次のポジションを獲得できなかった場合、本研究課題を遂行できないので精神的にも研究へのモチベーションを保つのが難しかった。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度に実施した調査では、日本の修道院で問題になっている修道士(人員)不足について検討したい。また人員不足から派生する問題とその問題に対する対応策に注目している。特に男子と女子修道院でも修道院で起きている問題とその問題への取り組み方に違いが見られる。例えば、日本の女子修道院ではカンボジアから積極的に若い(20代から30代が中心)修練者を招き、修道士になるまで丁寧に時間をかけて教育をしている。一方、男子修道院では、理由はまだ分析できていないが海外からの修練者の招聘がうまくいっていない。つまり女子修道院に比べて修道士の減少の速度が速く、修道院の維持が困難になってきている。こういった問題に注目しつつ、本研究課題の修道院手話の継承問題について繋げて検討する予定である。 特に当該年度の研究成果は、次年度もフィールド調査を行いデータを補完しつつ、東アジア日本研究者協議会などの、主にアジアで開催される学会で発表する予定でいる。カトリック研究については、韓国や台湾、フィリピン、カンボジアなどカトリックの人口が多い国での知見を得たいと考えているので、積極的にこういった国々での調査、研究発表などを行いたい。 また次年度は、研究に集中できる環境とポジションにいるので、論文の執筆に集中して取り組みたい。当該年度は時間がなく、書いた論文が不採用になっている。論文内容と投稿先も改めて検討する。
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