研究課題/領域番号 |
23K12181
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
平山 裕人 関西外国語大学, 英語国際学部, 助教 (10878292)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 意味論 / 証拠性表現 / 認識法助動詞 / 個人的嗜好述語 / 推量モダリティ |
研究開始時の研究の概要 |
近年の日本語の証拠性表現の形式意味論的研究は「証拠性表現を用いて命題pを発話する場合、pが、話者がその文が発話される文脈において有している証拠qと特定と関係になければならない」といった文脈に依存する形の制約を提唱してきた。本研究は「文脈関係なく証拠性表現が、同じ文内に生起する表現とどのような相互作用を起こすか」という観点で証拠性表現の意味的特性を検討する。具体的には、個人的嗜好述語と認識法助動詞「にちがいない」「だろう」および間接証拠性表現「ようだ」「みたいだ」との相互関係の分析を通して、証拠性表現の未知の意味的特性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、証拠性表現の意味について、「証拠性表現を用いて命題pを発話する場合、pが、話者がその文が発話される文脈において有している証拠qと特定の関係になければならない」といった文脈に依存する形の制約ではなく、「文脈関係なく証拠性表現が、同じ文内に生起する表現とどのような相互作用を起こすか」という観点で証拠性表現の意味的特性を検討することである。そのケーススタディとして、本研究は個人的嗜好述語と認識法助動詞「にちがいない」「だろう」および間接証拠性表現「ようだ」「みたいだ」との相互関係に焦点を当てる。 本年度は2023年3月開催のJapanese Korean Linguisticsにおける口頭発表の論文化を通して、個人的嗜好述語と認識法助動詞/間接証拠性表現とが共起する際の文の意味を合成的に派生させる手続きを明確化し、かつ、「証拠性表現を用いた推量は仮定的な情報に基づくことができない一方、認識法助動詞を用いた推量はそれが可能である」という新たな一般化を提示し、この一般化が成り立つかどうかについて言語間で差異がある可能性も提示することができた。 また、この研究を通して以下の副次的な示唆も得られた。英語の認識法助動詞mustに前提を含む語彙項目が埋め込まれた際、その前提は主節レベルまで投射する、いわゆる前提の穴 (presupposition hole) だと言われており、日本語の認識法助動詞「にちがいない」もこの特性を持つと無批判に仮定されていたが、そうではないことを示す例を提示することができた。これは、英語における前提の扱いをそのまま日本語に適応することは妥当なのだろうかという新たな視座を提供するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」欄で記したように、特に推量の形式の点で本研究はおおむね順調に発展していると言える。本年度は、2023年3月開催のJapanese Korean Linguistics 30における口頭発表“Predicates of Personal Taste and epistemic modals/evidentials in Japanese”の論文化を行い、現状での成果および残された問題を明確な形で発表することができた。特に経験者が明示されている個人的嗜好述語と認識法助動詞/証拠性表現との合成的な意味派生プロセスはAnand and Korotkova (2018) などの先行研究では明確に説明されていなかったが、本研究ではそのステップをクリアに示すことができた。また認識法助動詞と認識副詞「まさか」の相互作用に関する副次的研究にも着手し、認識法助動詞の意味に関するより深い知見を得ることもできた(この研究成果はSinn und Bedeutung 28にて発表されている)。
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今後の研究の推進方策 |
本研究を通して得られた「証拠性表現に基づく推量は仮定的な情報に基づくことができない一方、認識法助動詞に基づく推量はそれが可能である」という一般化はあくまで記述的一般化であり、なぜこれが成り立つのかという観点からの原理的説明が求められる。また、個人的嗜好述語と認識法助動詞の共起性については言語間での差異が見られる(経験者が明示されている個人的嗜好述語と英語のmustは共起不可能だが、日本語の「にちがいない」は共起可能である)。この言語間の差異についても説明が必要である。来年度はこれらの2点を主なイシューとして研究を進めていく。
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