研究課題/領域番号 |
23K12238
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02100:外国語教育関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
佐山 豪太 上智大学, 外国語学部, 准教授 (60824480)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2027年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 語彙学習ストラテジー / ロシア語 / 接辞 / 語彙力増加 / 語形成 |
研究開始時の研究の概要 |
接辞の知識は、学習者が新しく出会う派生語の意味を推測する際や、学習済みの派生語の意味を記憶する際の助けになるとされる。だが、実証的にその効果を確認した先行研究は少ない。 本研究は、日本人ロシア語学習者を対象とし、まず接辞を使用した語彙学習ストラテジーの効果を実証的に確認する(研究目的1)。より具体的には、「新しく出会う派生語の意味予測」と「学習済みの派生語の記憶強化」において、接辞(接頭辞と接尾辞)の知識がどの程度役立つのかを、実験を通じて調査する。そして、申請者の過去の科研事業に基づいて、 図を活用した「多義的な接辞の意味の学習法」を完成させる(研究目的2)。
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研究実績の概要 |
23年度は実証研究、アンケート、研究報告を行った:まず、動詞接頭辞v- (in, into)を分析対象として、未知語の意味を予測する決定ストラテジーに関する実証研究を行った。具体的には、まず、実験グループと統制グループを用意した。次に、両グループに対して、上記接頭辞を含む未知の動詞の意味を予測する事前・事後テストを実施した。ただし、著者による語形成の講義を実験グループにのみ事前テストの後に受けてもらった(後に実験グループにも説明)。その後、事後テストまでそこで得た知識を意味予測のストラテジーに適用する練習を積んだ(つまり、統制グループとは異なり、実験グループは事後テスト時に、決定ストラテジーとして接辞を用いる知識を有していた)。分析の結果、実験グループの方がテストの点数が統計的に有意に高かった。この結果は、語形成の知識が決定ストラテジーとして使用可能であることを示している。ロシア語の語彙は、基体にまず接頭辞が付加され、さらにその派生語から接尾辞付加によって多様な語が形成される傾向が強い。そのため、接頭辞を用いた語彙学習ストラテジーの効果を実証的に確認できた意義は大きい。 また、これまで英語を対象とした研究では、アンケート調査によって語彙学習ストラテジーをどの程度学習者が使用しているのか、などが調査されてきたが、本研究ではロシア語の接辞使用に要点を絞ったアンケートを実施した(n = 100)。その結果、第一外国語としてロシア語を学ぶ学習者は、接頭辞を語彙学習ストラテジーとして使用する意識を有しているが、接尾辞に関してはそれが欠如しているという結果が得られた。同時に行った記述回答の質的な分析から、この結果は、教材や授業内で接尾辞が扱われていない状況に起因することが読み取れた。本分析から得られた成果は、教材の記述に変更を加えるための一根拠となり得る点で重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度は一つの接頭辞を対象とした語彙学習ストラテジーの実証研究を、2つのグループを用意し、かつ事前・事後テストを行うというモデルで実施できた。 本来であれば、接頭辞を用いて同様の実験をもう一つ予定していた。しかし、上記実験結果をまず論文としてまとめ、海外のロシア語学の雑誌(Russian linguistics)に投稿し、日本よりも海外に多い本研究分野の専門家(特に、語彙学習ストラテジー)から研究手法や論文の内容に関して意見がもらえることを期待して執筆を行ったため、実験をすることが難しかった。尚、前述の雑誌投稿は掲載された。 また、当初予定はしていなかったが、接尾辞の実験を行うことに先駆けて、学習者がそもそも接頭辞・接尾辞を学習ストラテジーとして使用するという意識を有し得るのかどうかを、英語の先行研究に倣って実施した。本研究の成果をまとめた論文は投稿し、現在査読中である。その他にも、教科書の記述から判断して、日本人ロシア語学習者は接尾辞に関する知識が乏しいと推測されるが、実験前にその点を確認する必要性を感じたこと、アンケート結果に関して国内の学会で報告し、他の研究者から意見をもらえるように努めたことなどを考慮し、おおむね研究の進捗は順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、①接辞の知識に関するアンケートと②強化ストラテジーに関する実証研究を実施する予定である。 ①に関しては、日本人英語学習者を対象とした先行研究に基づいて、第一外国語としてロシア語を学ぶロシア語学習者に対して、接辞の知識を問うアンケート調査・テストを実施する。具体的には、当該の接頭辞・接尾辞を含む3つの派生語を提示し、これらに共通する接辞の意味を解答してもらう。さらに、これと合わせて、その後同様の被験者に語彙テストを実施して、接辞と語彙の知識の相関を確認する。英語とは異なり、ロシア語には語彙力を測る、広く流通したテストが用意されていない。そのため、既存の英語の語彙テストを参考にし、自身でロシア語版を作成する予定である。この調査により、日本人ロシア語学習者がどの程度接辞に関して知識を有しているかがある程度確認できるが、成果の副産物として得たその結果から、今後実験に用いる接辞の選定が可能になると考える。 ②に関しては、これまで扱われてこなかったロシア語の接尾辞を対象として実証研究を行う予定である。具体的には、派生語を基体と接尾辞に分析する知識が、その派生語の意味の定着にどのような影響を与えるかを確認する。その準備として、まず、どのような語彙を用いて実験が可能であるかを事前に確認する必要があるため、学生が使用する教材を語彙リスト化した。これを用いて、どの規模の実験モデルが可能かを検討して実行に移す。
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