研究課題/領域番号 |
23K12276
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
長谷川 裕峰 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 招へい研究員 (60802361)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 聖教類 / 別所 / 延暦寺 / 聖教 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、聖や持経者の根拠地となる場合が多い別所による「聖教類の保管能力」に着目し、大寺院の中心から離れた場所で知的財産が継承されてきた過程を解明する。古代・中世を通じて様々な宗教活動が活発化したが、その一端は、当該期の政治・経済的動向に対して距離を置いた「別所」における思想的発展にも顕著に表れる。「遁世僧」という論点に加え、特に延暦寺において一部の学派にのみ伝承された『四十二字門』の悉皆調査を通して、別所で新しく流派が形成された意義を論じる。これは、寺院内部における法流の維持に必要不可欠な「聖教類」の保管体制と、寺院周縁部に形成された別所との有機的な関係を探る重要な視角と考える。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、分析対象を(ⅰ)別所そのものと(ⅱ)別所に残る聖教類に分けて考察を進めたが、両者とも基本資料の収集に基づく研究手法であったため、本年度は主に資料博捜に務めた。 ・(ⅰ)に関しては、令和5年度予算において葛川明王院で聖教類を収集した願海の基本史料をデジタルデータ化した。同時に、『大行満願海阿闍梨の研究(資料編)』(USS出版、2023年)の編纂に携わり、数多くの新資料の再発見に立ち会う事が出来た。 ・(ⅱ)に関しては、拙稿「『阿弥陀房抄』覚書」(『坂本廣博博士喜寿記念論文集 佛教の心と文化』p.729~p.758、2019年)に基づき、「三周未来成道」「法身八相」という算題に着目した考察を行った。 その結果を口頭報告として「論義書の編纂過程―『阿弥陀房抄』を例に―」令和5年度第1回文研例会(2023.05.10、於叡山学院)/「竪義史料の再検討―『阿弥陀房抄』と『廬談』を比較して―」令和5年度叡山学会(2023.05.29、於叡山学院)/「『探題故実私記』精義故実の検討―竪義の構造を解明するために―」(令和5年度第2回文研例会(2023.10.10、於叡山学院)/「「精義故実」にみる天台竪義の実態」第65回天台宗教学大会(2023.11.10、於叡山学院)/「中世延暦寺における大堂竪義と私竪義―妙法院門跡所蔵本に見る竪者を中心に―」(第28回平安仏教学会(2023.12.08、於叡山学院))を行い、論文として「三周義における算題 ―「三周未来成道」「法身八相」を事例として―」(『天台学報』65、p.95~p.109、2023年)/「『精義故実』にみる探題「取籠」の構造」(『叡山学院研究紀要』46、p.151~p.174、2024年)を掲載した。 以上、これらの翻刻成果・史料整理を通して、当該期における「聖教類」の保管体制を探る一端を解明したと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『阿弥陀房抄』『天海蔵義科抄』「葛川明王院奉納聖教類」の博捜に関しては、確実に手元資料として集積されており、概ね全体像が把握できる段階まで進んでいるといえる。これに基づき、より一層の翻刻作業に加え、特定の別所や聖教に注目しながら考察・比較検討を行い、各学会等における報告を通して意見交換をする事が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
上記の(ⅰ)に関する教学的分析を行うために、zoom会議システムを利用した検討会を実施する予定である。ここでは、『台宗論義二百題』の輪読や願海の収集した聖教類の分析を進め、『四十二字門』を中心とした別所における「聖教類」の保管体制について実態を考察したいと考える。
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