研究課題
若手研究
本研究では、聖や持経者の根拠地となる場合が多い別所による「聖教類の保管能力」に着目し、大寺院の中心から離れた場所で知的財産が継承されてきた過程を解明する。古代・中世を通じて様々な宗教活動が活発化したが、その一端は、当該期の政治・経済的動向に対して距離を置いた「別所」における思想的発展にも顕著に表れる。「遁世僧」という論点に加え、特に延暦寺において一部の学派にのみ伝承された『四十二字門』の悉皆調査を通して、別所で新しく流派が形成された意義を論じる。これは、寺院内部における法流の維持に必要不可欠な「聖教類」の保管体制と、寺院周縁部に形成された別所との有機的な関係を探る重要な視角と考える。