研究課題/領域番号 |
23K12286
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 国立歴史民俗博物館 |
研究代表者 |
賀 申杰 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 研究員 (10972143)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 官民造船業 / 横須賀造船廠 / 艦船造修 / 外需 / 武器移転 / 造船業 / 艦船輸出 |
研究開始時の研究の概要 |
1900~1910年代、日本の官民造船所は国内の軍需・民需市場のみならず、国際市場においても合計37隻の艦船を輸出することに成功していた。該当時期、外交機関及び海軍の積極的なバックアップの下で行われた艦船輸出は①商取引、②海外利権の獲得手段、③軍の武器移転という三重の性格を持っていた。輸出先に対する日本の政治的影響力の強弱、輸出先の内外情勢、及び企業の経営策によって輸出の三重性格の構造は複雑な様相を呈していた。本研究は、多言語資料を利用して艦船輸出の交渉過程を明らかにし、その上、日本と輸出先の諸国双方の視点から、1900~1910年代の艦船輸出の三重性格の構造を解明したい。
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研究実績の概要 |
(1)【国内の史料調査・分析】初年度の2023年度は、神奈川県公文書館で新しく公開した横須賀鎮守府文書、横浜開港資料館所蔵の牛島辰五郎旧蔵資料、横浜船渠関係資料および国会図書館憲政資料室、防衛省防衛研究所所蔵の外国艦船造修に関する公文書、海軍軍人の旧蔵文書・日記を調査・分析した。その上、日本の官民造船所における外国船の建造・修理の事業構造について検討し、その成果を論文化して『史学雑誌』(133編3号)で公表した。 (2)【台湾所蔵の関連史料の入手・調査】本年度は、清への川崎造船所、三菱長崎造船所の艦船輸出に関する資料(国家発展委員会档管理局(台湾)所蔵)、および日本海軍の馬公要港部の設置、および同要港部における内外艦船の修理状況に関する資料(総督府公文類纂、台湾総督府档案、国史館(台湾)所蔵)を調査し、①日露戦後、清の地方政府が川崎・三菱長崎の二つの民間造船所に艦船を発注した理由、②日露戦後、馬公、旅順における日本海軍の修理工廠の整備、およびこれらの工場が海軍の部外工事、とりわけ外国船の造修工事に従事した状況、という二つの問題について考察し、その成果の一部を海外で報告した。さらに2024年度の論文化をめざしている。 (3)【中国近代経済・産業史研究の整理】近代日本の官民造船所の事業構造、とくにこれらの造船所が外国船の造修に従事した状況を分析する際、その競争相手、すなわち香港、上海に位置する欧米人経営の造船所の存在が無視できないため、本年度は、それらの企業の設立、経営状況に関する中国近代経済・産業史の研究を整理し、関連史料の残存・所蔵状況の把握に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度に予定されている日清・日露戦間期、東京湾内の官民造船所における外国船造修に関する史料の整理・分析、および関連論考の投稿、掲載は予定通り年度内に実現した。 また、海外史料の調査に関しては、勤務先の仕事上の事情によってやや遅れている面もあるが、知人への調査依頼やデジタル化されている史料データの入手によって、2024年度の研究を推進する上で重要な資料・手がかりを確保している。 そのため、計画全体を比較的スムーズに進展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、引き続き前年度に入手した史料の整理、分析を行い、その上年度内に論文化することを目指す。また、今後の課題として以下の二つが挙げられる。 【課題①、東アジア海域における欧米資本の造修船所の経営状況・方針】「研究実績の概要」の欄で述べている通り、日本の官民造船所における外国船造修の事業構造を分析する際、視野を東アジア海域全体に広がり、中国沿岸、とりわけ香港、上海に位置する欧米人経営の造船企業の経営状況を分析する必要がある。次年度以降では、中国経済・産業史研究の観点を取り入れて研究を進めたい。 【課題②、外国船造修(とくに修理)をめぐる「国際責務」意識の形成】外国船の造修の事業構造を考察する際、日本の官民造船所が積極的に外国船の造修事業に従事した理由の一つとして、国家権威の象徴として見做される外国艦船、あるいはモノ、ヒト、情報の往来を担う海運船舶の造修を引き受けることは近代の「文明国」が果たすべき「国際責務」である、という意識の存在に気付いた。2024年度以降は、この意識の形成過程について、明治期の海軍、外務省の公文書および東アジアに滞在していた欧米人の記録を利用して考察を進めたい。
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