研究課題/領域番号 |
23K12287
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 京都橘大学 |
研究代表者 |
岡島 陽子 京都橘大学, 文学部, 専任講師 (20973366)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 女房 / 内侍 / 女官 / 内侍司 / 命婦 / 奏請宣伝 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、令制以来女官組織の中で中心的な役割を果たした内侍司を多面的に検討することで、女官・女房集団が担った天皇への近侍機能と「奏請」「宣伝」機能の実態を明らかにする。これにより、律令官僚制ならびに貴族社会の研究の中で従来曖昧に処理されていた女官・女房を政治機構・国家運営形態の中に捉え直し、新たな時代像を提示することを目指すものである。
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研究実績の概要 |
研究計画一年目では、内侍や女房、そのほかの女官を細かく抽出し、それぞれの役割を明確にする作業を行った。 特に『吉記』養和元年(1181)11月20日条の記事に注目して検討を進めた。当該史料では解斎に供奉する中臈女房の能登が、同儀は近衛朝で常陸内侍が務めたので「内侍役」ではないかと主張し、藤原経房は旧記から「女房役」であると答え、勾当内侍である美作内侍に判断を任せている。内侍は女房に含まれる立場であるが、ここでは儀式での役割が明確に区別される意識が読み取れる。そして女房・内侍の職務差配は筆頭である勾当内侍が担っていたと指摘できる。『江家次第』では解斎の御手水には「女房二人」が務めていることから、経房の見解の方が正しいと考えられる。例にあがった常陸内侍は内侍もあり女房でもあるが、能登は中臈の女房で内侍ではない。 『後二条師通記』寛治7年(1093)5月27日条には内侍(掌侍)について、実態としてはすでに亡失しているにもかかわらず律令に定められた「十二司」の三等官であるという見解が記されている。 以上より、内侍が女房に含まれ女房としての役割も担いながら、律令制以来の内侍司の一員としての存在意義を喪失していないという二面性を持つことは、これまで見過ごされてきた点である。従来女房の中に内包してとらえられがちな「内侍」の存在は、職務分担面では区別する必要があり、そういった意識は女房/内侍の中に明確に存在することを明らかにした。以上の内容を論文内で指摘した。今後の研究を進める上で、上記の点を考慮し史料上に表れる女性の働きについて検討を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまでの収集史料の整理・検討を中心に進め、成果を一部論文内にまとめた。しかし当初の研究では、上記の指摘を踏まえて史料全体に敷衍する作業を行う予定であったが、そこまでの研究を進めることができなかった。本年度の途中より、当初予定していなかった研究中断事案が生じ、十分な作業時間を設けることができなかったことが要因である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の課題として女官の奏請・宣伝機能と、内侍司に所属する下級女官の存在を挙げているが、これらについて十分な検討が進められていない。後者について本年検討した「内侍」が必ずしも女房ではないという点は従来指摘されており、下級女官である「内侍」の存在にも合わせて検討を加えていく。今年度の検討を踏まえ「女房役」と律令女官の系譜を継ぐ「内侍役」という角度から、分析を進めることで女性が宮中で果たす役割や立場について明らかにしいきたい。
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