研究課題/領域番号 |
23K12290
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03030:アジア史およびアフリカ史関連
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中尾 世治 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 助教 (80800820)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | 史学史 / 歴史叙述 / アフリカ史 / リテラシー / オラリティ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、20世紀に活躍した西アフリカ・ブルキナファソのムスリムの知識人アルハジ・マルハバ・サノゴ(1897年生-1981年没)と第二次世界大戦後の西アフリカのイスラーム史研究を牽引したアイヴォア・ウィルクス(1928年生-2014年没)の接点に着目し、アフリカのローカルな知識人の知が欧米の研究者とのかかわりを経て、いかに変容しながら、アカデミックな領域としての「アフリカ史」を形成してきたのかを明らかにする。そのために、西アフリカ各国、アメリカの大学・公文書館に所蔵されている史料の調査をおこなう。
|
研究実績の概要 |
米国ノースウェスタン大学ハースコヴィッツ記念図書館に所蔵されているガーナ・コレクションに含まれている西アフリカのアラビア語写本の調査と読解をおこなった。ボボ・ジュラソのローカルな歴史家であるアルハジ・マルハバ・サノゴの書いた写本と、マルハバが収集した写本を比較検討しつつ、マルハバにインタビューをおこなった歴史研究者であるウィルクスのフィールドノートを確認した。それらの分析によって、ウィルクスによって提示された「西アフリカ内陸のマンデ系ムスリム(ジュラ、ジャカンケ)のウラマーは、アル=ハジ・サリム・スワレという人物を学問上の共通の祖先としている」という論点を大きく修正する必要があることが明らかになった。特に、ウィルクスが、マルハバがヴォルタ川流域の歴史的な知に基づきつつ新たな構想をもって執筆した歴史書と、マルハバの収集したセネガンビアの歴史書を混同していたということが、ウィルクスの学説の根本的な問題であった。これらから、西アフリカの歴史叙述の伝統が地域によって異なっていたことを踏まえると、20世紀半ば以降のアフリカ史のアカデミックな歴史叙述は、西アフリカの歴史叙述の伝統の知識に深く影響されつつ、異なる歴史叙述の伝統を組み合わせて成立させたものであるといえるということが明らかになった。この点について、ノースウェスタン大学アフリカ・イスラーム思想研究所において発表し、英語の論文を執筆し、英文ジャーナルに投稿した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ガーナコレクションのアラビア語写本の収集と読解をおこない、それに基づいて、ウィルクスの提示した学説の根本的な問題点を浮き彫りにすることができた。そして、その内容をウィルクスが長く所属したノースウェスタン大学のセミナーにおいて発表し、英文ジャーナルへの投稿をおこなった。その意味で、おおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
ウィルクスの学説「アルハジ・サリム・スワレの伝統」は、以下の3つの要素によって構成されている。(1)西アフリカ内陸のマンデ系ムスリム(ジュラ、ジャカンケ)のウラマーは、アル=ハジ・サリム・スワレという人物を学問上の共通の祖先としている。(2)イジャーザに示されたイスナードにおいて、アル=ハジ・サリム・スワレが共有されている。(3)アル=ハジ・サリム・スワレの伝統にあるウラマーは、政治の領域にかかわらず、軍事的なジハードに批判的である。(1)については、すでに発表をおこなった。(2), (3)について、今後研究を進めていく。
|