研究課題/領域番号 |
23K12294
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03030:アジア史およびアフリカ史関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
吉川 和希 関西大学, 文学部, 准教授 (60881464)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | ベトナム東北地域 / 18~19世紀 / 地方支配 / 阮朝 / 黎鄭政権 |
研究開始時の研究の概要 |
近年の学界ではインドシナ半島北部山地が注目を浴びており、18~19世紀における移民の流入や内陸交易の活発化、王朝権力の介入、山地住民の生存戦略などが解明されつつある。しかし、平野部の王朝権力に対して比較的従順な態度を示してきたベトナム東北地域に関する歴史学的研究はほぼ皆無であり、在地住民の主体性は考察されてこなかった。そこで本研究は未公刊の新史料の分析を通じ、18~19世紀のベトナム東北地域における社会経済構造とその変容、王朝権力の支配の変遷、及びそれに対する在地住民の対応を解明し、西南中国から東南アジア大陸部にかけての山地世界の歴史的文脈の中に位置付けることを目指す。
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研究実績の概要 |
18世紀末から19世紀ランソン省の首長集団の家譜を分析し、宗族形成の過程を考察して論考として発表した。諒山鎮/省の禄平州屈舎社韋氏・脱朗州有秋社阮廷氏に焦点を当て、以下の事柄を明らかにした。屈舎社韋氏は18世紀末から先祖の姓名・官職・忌日などの情報を記録するようになっていた。遅くともこの時期には、屈舎社韋氏は朱子学の思想に基づいて祖先祭祀や家譜編纂をおこなうようになったといえよう。家譜の中には祠堂や族産についての記述はない。前述のように序文も書かれておらず、家譜としての体裁は整っていない。しかし韋氏が19世紀までに祖先祭祀や家譜編纂の文化を受容した証拠といえる。また脱朗州有秋社阮廷氏の家譜にも序文はなく、本家譜を編纂した目的も記載されていない。また本資料は阮廷氏の三つの支派が認識している系譜を寄せ集めただけで、ひとつの一族の系譜として整理されてはいない。祖先祭祀のやり方などを記した箇所もあるが、全体として祖先祭祀をおこなうためのメモ書きに等しく、整った家譜というわけではない。 また黎鄭政権期の国家祭祀について発表をおこない、黎鄭政権では、南郊・太廟・宮廟・孔子が「四尊」と呼称されていること、「四尊」のうち宗廟については、形式面においても宮廟は太廟と同等、祭物の量や皂隷の数の面で宮廟が厚遇されていること、南郊と孔子の祭祀は形式上黎朝皇帝の権限のはずだが、鄭王府による南郊祭祀の代行(1724、1776)や孔子像の変更(1755)など、礼番の設立と調銭の施行以後国家祭祀を鄭王府が実質的に管轄しようとしていることなどを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
夏と冬の2回ベトナムでの現地調査をおこない、新しい史料を収集できた。また、今年度家譜を分析して論文を発表したことで、同種の史料を分析する目途が立った。
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今後の研究の推進方策 |
著書を出版しこれまでの研究成果をまとめると同時に、今後もベトナムでの現地調査を継続し、新史料の収集を目指す。
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