研究課題/領域番号 |
23K12298
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
古川 高子 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師 (90463926)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | ツーリズム / アルピニズム / 山岳地域農民 / 戦間期の文化・スポーツ組織 / 山農村の土地売買・利用 / ボーダー研究 / ナチ時代の山村 / ナショナリズム / 社会的自由主義 / 社会構造 / オーストリア |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、歴史叙述上の断絶期とみなされてきたナチ期オーストリアの山岳ツーリズムを、社会的自由主義時代における山岳ツーリズムという視角を用いて分析し、山岳ツーリズム従事者による実践と彼らの意識を検討することで、権威主義体制期を含む戦間期から戦後社会期に至るまでの山岳ツーリズムの一貫性を提示しようとするものである。その際、戦間期以降の政府・行政側によるツーリズム統括組織の具体的実践活動と山岳地域の社会構造、地元住民の帰属意識やツーリズムに対する認識を解明することを目指し、それらが第2次世界大戦後のオーストリア国民形成に用いられた大衆ツーリズムの基盤となったことを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、オーストリアの山岳地域におけるツーリズムと地元民との関係を追究するものであり、2023年度はこの研究を開始するに当たって、まず必要な書籍を購入した。また、2023年秋から冬にかけて研究対象地であるオーストリア・ウィーンの連邦公文書館、クラーゲンフルトにある州立公文書館、さらにオーストリアルペン協会、オーストリアアルペン協会クラーゲンフルト支部、ならびにインスブルック支部、オーストリア支部ケチャッハマウテングループ等の担当者と連絡を取って、彼らの協力を仰ぎ、必要な諸史資料を収集するための準備を行った。11月末からは2024年3月に海外調査をするための準備を開始し、担当者との連絡を密に取り合ってより詳細な計画を練るとともに、海外出張のための準備を行った。2024年3月に20日間以上の海外調査を実施し、まず連邦公文書館にて1930年代から40年代の政府統括下の文化・スポーツ諸組織の書類やツーリズム関係の統計等を収集し、同じくウィーンにあるオーストリアアルペン協会では、これまで入手できなかった諸文書を収集した。その後、クラーゲンフルトの同協会クラーゲンフルト支部にて、必要な資料を収集した。 加えてスロヴェニア・コペルの社会科学センターにてボーダープロジェクトの責任者ボルート教授と面会・議論し、国境を超えたスポーツ・文化活動に関する研究(イタリア・ユーゴスラヴィア)等を行っている研究者との交流の機会を得た。イタリア・フィレンツェでは本研究課題のメンターである欧州大学院教授ジャドソンと面会し議論を行った。この海外資料収集によって、これまでの研究では触れられていない新事実も発見でき、それらを踏まえて両教授と議論をしたことで、今後の展望を持つことができた。 2023年11月にはこれまでの研究のまとめとして日本山岳文化学会大会にて報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究に必要な書籍を購入し、読解することで研究を進めることができた。 海外調査に必要とする電子機器等を購入し、それらを利用して2024年3月に海外調査を行うことができた。 オーストリア連邦公文書館での史資料収集では、1930年代の国家による文化的統合機関のニューズレター、政府機関による文書、会議文書、ツーリズム関係資料・統計および1938年以降の警察資料などのうち、半分程度を収集することができた。 アルペン協会諸支部では、諸支部レヴェルのニュースレター、1930年代から1950年代にかけての各支部と地元民とのやり取り、土地の売買、ガイドの手配・管理、遭難救助などに関する史資料を全体の三分の一程度収集した。各支部の支部長やアーキビストとの実り多い議論も行うことが出来た。 コペルの社会科学センター・ボーダープロジェクトにて知り合った研究者とは海外調査後も議論を続け、今後の研究についての展望が開けた。有意義な海外調査であったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、2023年度に収集しきれなかった文献を購入するとともに、調査で得た史資料ならびに既に購入した文献を読解し、まとめながら、本研究の大筋を明らかにすることを目的にしたい。 また、2024年3月に行ったオーストリアアルペン協会クラーゲンフルト支部での調査では、必要な書類の三分の一程度、オーストリア連邦文書館での史資料収集は必要書類の半分程度で終了してしまったことから、2024年度には残りの諸史資料を収集するための海外調査を行う予定である。 詳細に言うと、オーストリアアルペン協会クラーゲンフルト支部では、地元民と地方都市にある登山家協会支部の関係を明らかにするための残りの史資料,特に支部管轄の土地売買と小屋建設・維持、ツーリズム従事者の意識を検討できる史資料を集め、連邦文書館では、ナチ時代の歓喜力行団に関する資料を集め、不足分が出てきた場合は、ドイツ連邦文書館まで赴いて収集する予定である。
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