研究課題/領域番号 |
23K12304
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
門間 卓也 愛知学院大学, 文学部, 准教授 (90868291)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 社会主義 / ナショナリズム / 記憶政治 / ジェンダー / 冷戦 / 記憶研究 / 反ファシズム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、社会主義ユーゴスラヴィアで退役軍人組織が主導・関与した大衆動員政策として記念碑建立事業、および全人民防衛体制を取り上げながら、世代間・民族間で政治意識の差異や社会主義体制への改革の要望が浮上した1960年代から70年代前半の時期に、果たしていかなる形で反ファシズムに連なる記憶政治が発揮され、青年層の歴史認識の構築を促したか分析するものである。特に退役軍人らが他国の同組織とのネットワーク構築に努めていたことを考慮し、彼ら/彼女らが冷戦期東欧を取り巻く政治情勢の変化に即していかなる歴史認識を提起したか、さらにそれを「受容・解釈」した青年層の政治姿勢について検討する。
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研究実績の概要 |
研究期間の初年度にあたる2023年度は、主に関連文献の収集と講読、および研究対象地域(クロアチア、セルビア)に渡航して文書館での史料調査に取り組んだ。とりわけ第二次大戦期の被災地における記念碑建立事業が60年代に進展した過程について分析を進めた。その結果、退役軍人団体の史料や刊行資料(新聞・雑誌)を基に、虐殺の舞台でもあったヤセノヴァツにおける記念碑建立事業に関する共産党関連組織内での議論と、市民に公開される情報の間で少なからず差異があることが判明した。具体的には後者においてパルチザン神話の称揚と歴史化が進められるのに対して、前者ではその言説が民族間の分断を深めることへの危惧を確認することが出来る。また前者においては、記念碑建立に際して共和国間での経費負担を巡る問題も取り上げられていた。 社会主義ユーゴスラヴィアでは第二次大戦期の民族間対立の詳細は秘匿されていたという見方が一般的であるが、本研究課題の見立て通り、当事者である退役軍人団体内部ではその経験が共有され、民族問題の再燃を回避する手立てが講じられていた。ただし60年代後半以降、戦争の記憶が薄れた後続世代の側から民族問題について公に論じる機会を求める声が高まっていく。その沸点が1971年の「クロアチアの春」と思われるが、そうした世代間の対立と断絶の様相についてはより詳細な史資料の検討が必要である。 また別の視角として、戦争経験を巡るジェンダー間での認識の差異に注目し、史資料の分析に取り組んだ。まず歴史的背景を詳らかにするため、第二次大戦期の政治環境下で女性がいかなる立場に置かれていたかまとめた上で、特に体制側との関係性に焦点を当てた報告をジェンダー史学会年次大会で行った。この研究成果を基に、戦後の退役軍人団体内部でいかなるジェンダー問題が生じたか検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究計画として予定していた研究状況の把握や史資料の収集などは順調に進んでいる。特に退役軍人団体の記念碑建立事業参画に関わる文書史料は(60年代に関しては)概ね入手することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
20204年度は収集した史資料を基に研究課題に即した投稿論文の執筆を進める。またより研究対象である退役軍人団体のより具体的な議論の内幕を探るため、研究対象地域を特定の都市に絞った上で、地方の文書館での史料収集に取り組むことも計画している。
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