研究課題/領域番号 |
23K12327
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分04020:人文地理学関連
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
庄子 元 岩手大学, 教育学部, 准教授 (90774696)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 再生可能エネルギー / 営農型太陽光発電 / メガソーラー / 農村 / ガバナンス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、再生可能エネルギーの開発を農村が受容、または拒絶するメカニズムを農村におけるガバナンスという観点から明らかにすることである。 社会的に要請されている再生可能エネルギー開発の多くは、農村が対象地である。こうした開発事業は、農村にとって新たな収入源となる可能性がある一方、開発事業者が立地する都市による農村資源の収奪という性格もある。そのため、開発事業では農村の居住者や観光業者などを中心とする反対運動が散見される。 本研究では農村と都市の関係が異なる4地域を事例とし、再生可能エネルギー開発に対する意思決定の比較から、農村が都市や企業に収奪されない再生可能エネルギーの普及に寄与する。
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研究実績の概要 |
本年度は再生可能エネルギー開発を受容した農村のガバナンスを明らかにするため、岩手県一関市の旧藤沢町を事例地域に選定し、大規模な営農型太陽光発電の開発のプロセスとガバナンスを調査した。 旧藤沢町の営農型太陽光発電は国営開発農地に立地している。当該地域における営農型太陽光発電を開発したのは東京都内の企業である。この開発企業と一関市を国会議員、一関市議会議員が仲介し、山間部の開発であるため土壌条件が悪く、低利用な農地というローカルな情報が開発企業にもたらされた。 営農型太陽光発電の開発における課題は、資金調達と住民との合意形成である。資金調達は地方銀行のプロジェクトファイナンスが実施された。適切な営農が継続できない場合、発電施設を撤去しなければならない営農型太陽光発電に対し、プロジェクトファイナンスが実施されるのは全国的にみても先進事例であり、その背景には旧藤沢町の自治体農政をルーツとする公益社団法人の藤沢農業振興公社が支える農地利用の仕組みがある。また、住民との合意形成は、旧藤沢町が1970年代から取り組んできた住民自治の体制が基盤となって達成された。したがって、営農型太陽光発電が受容された基盤には旧藤沢町のまちづくりがある。 しかし、旧藤沢町のまちづくりやガバナンスは、平成の大合併によって一関市における一地域の特殊例として埋没されている。旧藤沢町において営農型太陽光発電を開発した企業の経営者も、開発の受容に貢献したローカルなガバナンスを認識しておらず、旧藤沢町における開発の成果として形式知的な性格が強いプロジェクトファイナンスの確立だけを述べている。 上述した旧藤沢町における営農型太陽光発電の開発を踏まえれば、旧市町村や集落といった既存の自治体よりミクロでローカルな暗黙知的なガバナンスを共有する仕組みが求められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に調査した岩手県一関市の旧藤沢町における営農型太陽光発電の成果は、2023年11月に開催された経済地理学会北東支部11月例会にて「国営藤沢地区における営農型太陽光発電のガバナンス」という題目で報告した。また、本年度8月以降は来年度に予定している大分県由布岳周辺のメガソーラー開発、再来年度の調査候補地である宮城県丸森町における再生可能エネルギー開発の事前調査を実施した。これによって来年度以降に予定している調査候補地についても、調査項目に修正を要する点を把握するとともに、調査の準備を整えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は岩手県一関市旧藤沢町で調査した営農型太陽光発電の成果を学術雑誌に投稿する予定である。また、来年度に計画している大分県由布岳周辺のメガソーラー開発の調査は、予定通り実施できる準備が整っている。 一方、再来年度の調査候補地である宮城県丸森町では、宮城県が2024年4月1日に施行した再生可能エネルギー地域共生促進税条例を受けて開発企業が撤退した。そのため、当該地域において開発企業を対象とした聞取り調査は困難であり、調査方法の見直しが必要となった。ただし、宮城県が施行した再生可能エネルギー地域共生促進税条例は、再生可能エネルギー開発をめぐるローカル、ナショナル、グローバルな政治的関係の新潮流といえる。本研究では分析環境を構築したうえで宮城県や市町村における議会資料のテキスト分析を行い、再生可能エネルギーの開発と抑制に関する政治的なスケールを議論する。
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