研究課題/領域番号 |
23K12339
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
村津 蘭 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教 (50884285)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2027年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | アフリカ / 呪術 / 宗教 / SNS / 情動 / マルチモーダル / ベナン / 身体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、現代アフリカの呪術をめぐる実践を、メディアが複雑に交錯する状況を視野に入れ、情動・身体の理論に根差して探究するものである。目的は、呪術的実践がいかに人々にとって説得力を持つかということを、現在進行形で拡大するSNSのコミュニケーションを視野に含めながら明らかにすること、それによってアフリカ宗教の現代的状況におけるダイナミクスへの理解を深めることである。同時に、宗教的実践における身体的・情動的現れに対して、小型で簡易な機器や新たな方法を取り入れながら調査することで、マルチモーダルアプローチによるフィールドでの新たな調査方法・成果公表方法を開拓・確立することを企図する。
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研究実績の概要 |
本研究は、現代アフリカの宗教をめぐる実践を、メディアが複雑に交錯する状況を視野に入れつつ、情動・身体の理論に根差して探究するものである。目的は、呪術や宗教的実践がいかに人々にとって説得力を持つかということを、現在進行形で拡大するSNSのコミュニケーションを視野に含めながら明らかにすること、それによってアフリカ宗教の現代的状況におけるダイナミクスへの理解を深めることである。また、小型で簡易な機器や新たな方法を取り入れながら調査することで、マルチモーダルアプローチによるフィールドでの新たな調査方法・成果公表方法を開拓・確立することを企図している。 本年度は、情動とマルチモーダル人類学・アフリカのメディア・宗教人類学に関する文献調査をしたのち、ベナンの現地調査を行った。7月のフィールドワークでは、当事者との協力による呪術や霊的存在の主観的経験捕捉をめぐる調査などをビデオカメラを用いて行った。2月から3月にかけてのフィールドワークでは、この調査では呪術のSNSグループの利用実態についてユーザに聞き取りを中心に調査した。 本研究に関する成果の発表とテーマに対する議論を深めることを目的に、日本文化人類学会、日本アフリカ学会で発表を行った。また、IUAES(国際人類学民族学連合)でも宗教と情動に関するパネルを副議長としてとして企画し発表した。1月には国際ワークショップ・シンポジウム『アカデミックリサーチと芸術の未来』を企画・運営し、マルチモーダルな調査・分析方法について議論した。さらに、翻訳者として参加していたT・チョルダッシュの『聖なる自己―カリスマ派の癒しの文化現象学』(水声社)と、研究のアウトリーチとして寄稿していた『世界ぐるぐる怪異紀行』(河出書房)が出版された。昨年度の投稿論文が日本文化人類学会奨励賞を受賞し、昨年度刊行した単著の民族誌が国際宗教研究所賞を受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は2度の現地調査に行くことができたため、当初の計画で予定していた調査を行うことができた。1つ目は、中南部ティオ地区での当事者との協力による霊的存在の主観的経験捕捉を目指した調査である。ビデオカメラを利用して行ったこの調査で得た知見と映像は、来年度以降、編集作業を経てマルチモーダルな形での展示を実施予定である。また、本年度は日本でも「不思議な力を感じるもの」を写真におさめるというワークショップを行った。今後その結果を比較することで、日本とアフリカにおける超常的なものに対する感受性の違いについて分析したいと考えている。 2つ目は、グループ管理者と参加者に対面で聞き取り調査である。それにより、SNSグループのコミュニケーション分析だけではなく、日常生活と個人の経験という文脈からSNSにおける行動を捕捉できた。つまり、呪術・治療をめぐるSNSコミュニケーションを立体的に分析することが可能となったといえる。 さらに、国際シンポジウムの企画だけではなく、国内外での発表を多数行ったことにより、研究テーマと理論や研究潮流ついての認識を深められた。 こうしたことから、研究がおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も文献調査とフィールド調査を両輪として実施しながら研究を進めていく。文献調査については、引き続きアフリカの人類学とSNSコミュニケーションに関するものについて調べる。 現地調査では、呪術師などへの聞き取りを続けると同時に、実験的なものも実施する。後者は、ベナンの公立小学校と連携し、子どもたちに対して写真撮影のワークショップを行う予定である。目的としては、子どもたちの表現能力を高めると、現地の人びとの超常的な存在に対する感受性を捉えることである。「超常的な存在を感じた時」の写真を撮影してもらうことをワークとして実施することにより、どのような物的環境、出来事において霊性を感じるのかの個々人の共通点と相違点に理解を深めるという手法を考えている。こうした実験的な方法を用いることにより、マルチモーダルな様態で、現地との共創的な調査方法を作りあげることを目指す。 今年度の成果発信としては、国際学会など通常の学術的な発表の場に加え、昨年度の調査における写真とナラティブ、及び会の映像記録を用いてオンライン・対面でのインスタレーションを予定している。それにより、従来の紙のテクストのみでは困難な、感覚的な知の伝達を図りたい。また、呪術とSNSというテーマと、マルチモーダル民族誌というテーマでの投稿論文を執筆予定である。こうした実践により、研究テーマであるマルチモーダル・アプローチへの理解と方法の確立を図りたい。
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