研究課題/領域番号 |
23K12359
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分05020:公法学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 繁元 北海道大学, 法学研究科, 助教 (50962669)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2027年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | アメリカ憲法 / 違憲審査 / 憲法訴訟 / 司法の優越 / 最高裁判所 / 憲法 |
研究開始時の研究の概要 |
これまで我が国の憲法学においては、憲法81条を根拠として、憲法の最終的解釈権限は最高裁にあるとする「司法の優越」を前提と捉えてきた。しかし、実際の憲法実務においては、「司法の優越」はその維持に困難が伴うものであり、加えて、最高裁が判決に対する政治部門や国民の反応を考慮した判断形成を行っていることも近年指摘されている。本研究では、アメリカにおける「司法の優越」に関する規範的議論と実証的議論を検討・分析し、それを参考として、日本の憲法実務において、司法部が判決に対する政治部門や国民の反応を見据えた政策的考慮を憲法判断に組み込むことについての、規範的な正当性や具体的な手法を探究する。
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研究実績の概要 |
本研究では、アメリカ憲法学における議論を比較研究の対象としつつ、最高裁における、政治部門や国民との相互作用を見据えた政策的考慮を、憲法判断の手法としてどのように位置づけるべきか、ということについて検討する。かかる検討を通じて、我が国の最高裁が現実に直面する社会的・政治的制約を分析・整理したうえで、最高裁がこのような制約に対する政策的考慮を働かせつつ違憲審査権限を行使するために有用となる方策を提示することが、研究の目的である。 今年度は、主として、本研究の基盤となる博士論文の公刊に従事した。具体的には、アメリカ連邦最高裁による憲法判断をめぐる公衆や政治部門の動向を分析することで、「司法の優越」が(公衆、大統領、議会によって)否定された事例、または政治部門によって「司法の優越」が構築された事例の存在を明らかにした。この研究の成果として、博士論文の一部に大幅な加筆・修正を加え、「司法の優越をめぐる法と政治(4):アメリカにおける議論を手掛かりとして」北大法学論集74巻4・5・6号(2024年)を公表した。同論文は、博士論文の連載4回目に該当し、次年度中にその連載を完結させる予定である。 さらに本研究に関連して、「司法の優越」や連邦最高裁における政策的考慮、さらには、司法部と政治部門や公衆間における相互関係に着目する「対話理論」に関連する文献を収集・分析した。その結果、アメリカにおける「司法の優越」や「対話理論」に関する規範的・実証的な分析を進めることができた。 また関連して、近時の我が国最高裁における憲法判断の動向を追うべく、金沢市庁舎前広場をめぐる最高裁判決についての判例評釈を、北海道大学公法研究会において行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、当初の予定通り、博士論文の公刊作業を主として遂行した。さらにその過程において、違憲審査における政策的考慮に関連する先行研究を収集するとともに、各文献の分析を行うことができた。そのため、現在までの研究全体の進捗状況は、おおむね順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、関連する国内外の文献の収集・分析を行う。次年度においては、第一に、連邦最高裁が、憲法判断において、「司法の優越」との関係で政策的考慮を働かせてきた事例について、問題となった憲法事例ごとに整理・分析を行う。それによって、①連邦最高裁が憲法判断において政策的考慮を働かせた背景、②具体的な連邦最高裁における判断手法、③判決が下された後の政治部門や州政府、アメリカ人民の動向、が明らかになることが期待される。 第二に、法の支配や法原理部門としての司法部の役割といった規範的な側面から、上記のような司法部による政策的考慮がどの程度許容されるのかを、アメリカにおける議論を参照しつつ、明らかにする。 また引き続き、博士論文の公刊作業を進め、次年度中の完結を目指す。
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