研究課題/領域番号 |
23K12368
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分05020:公法学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
石塚 壮太郎 日本大学, 法学部, 准教授 (90805061)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 環境国家目標 / 憲法 / 気候保護 / カーボン・ニュートラル / 環境保護 / 気候変動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、「憲法による気候変動防止の実現」の方途を明らかにするものである。現在、気候変動が世界的に喫緊の課題であり、その結果として干ばつや水害等の目に見える災害も増加している。このような問題に対し、憲法を通じてどのような対策をとることができるのかを検討する。多くの諸外国の憲法では、様々な環境保護条項が規定されており、それらがそれぞれどのような法的および実際上の帰結をもたらすのかが問題となる。また、すでに多くの国の裁判所で、気候変動防止を促す判決等が出されている。環境保護条項を持たない日本でも応用可能な解釈や判断手法が多数あるため、「憲法による気候変動防止の実現」は日本においても可能である。
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研究実績の概要 |
本年は、ドイツ連邦憲法裁判所が、2021年3月2日に下した「気候保護決定(BVerfGE 157, 30)」について検討を行った。 連邦憲法裁判所は、大きく分けて2つの事柄を審査した。第1に、生命および身体的不可侵性(基本法2条2項1文)を、気候変動から保護する国家の義務に照らし、気候保護法が不十分ではないかということである(オランダ最高裁はこの論理を用いたとされる)。これについては、結論として合憲とされた。国家の保護義務は作為義務であるから、原則として立法府が複数ある合憲の政策選択肢から決定するものであり、裁判所としてはそれが明らかに不合理である場合にしか違憲とはいえないからである。 第2に、将来における一般的な活動の自由(基本法2条1項)が、(2050年までの排出量上限が決まっている中で)2030年までの許容排出量が大きすぎることにより、制限されるのではないかという点である。この点について、違憲と判断された。まずIPCC(気候変動に関する政府間パネル)がパリ目標に向けて、排出可能なCO2量を算出している。これに基づいて、ドイツの専門家委員会は、2020年以降排出可能なCO2量は6.7ギガトンであるとした。問題は、気候保護法で2030年までに許容された排出量が、この6.7ギガトンをほとんど使い果たしてしまうことである。そうすると2031~2050年までの間、ほとんどCO2を排出することはできず、その間のCO2を排出する様々な活動(基本権行使)が著しく妨げられることになる。連邦憲法裁判所は、この点を非難し、同法では現在と将来世代との間で公平な負担の分配がなされていないとした。そして同法では、このような不均衡が生じないよう、十分な予防措置が講じられていないことが違憲であるとされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、「憲法による気候変動防止の実現」の方途を明らかにするために、a) ドイツ気候保護決定を読み解く作業、b) 他国の裁判所の判決等と比較・検討し、いくつかのアプローチに整理する作業、c) 各国の環境保護条項が実務や判例に与える影響について調べる作業、d) 日本への応用可能性を検討する作業が必要となる。 本年度では、研究実績にあるように、日本でも注目されたドイツの気候保護決定について、一定程度明らかにすることができた。またそれと合わせて、学説等における気候保護決定の評価についても理解を深めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、ドイツ連邦憲法裁判所の気候保護決定の論理を明らかにしたが、次年度は、オランダやアイルランド、さらに欧州人権裁判所で下された、類似の裁判の論理を明らかにし、各国・各地域における気候保護への法的アプローチの違いを整理・分析する。モデルとしては、人権を根拠として気候保護を求めていく人権アプローチ、環境保護要請を根拠として気候保護を求めている環境アプローチ、世代間において享受できる環境の格差が均衡すべきことを根拠に求める世代間正義アプローチが考えられる。これをベースとして、各判例を整理・分析し、モデルをさらに修正・細分化していくつもりである。
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