研究課題/領域番号 |
23K12373
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分05030:国際法学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
新倉 圭一郎 東京都立大学, 法学政治学研究科, 教授 (70803146)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 裁判権免除 / 人的性格 / 管轄分配 / 国際私法 / 不干渉原則 / 国家行為理論 / 司法判断適合性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、今日に至る国家実行の歴史的展開の中で、裁判権免除が認められる根拠についてどのような理解がとられてきたのか、そして要件や免除の基準といった制度の各則は実行においてどのように展開してきたのか、を検討し、通説的な理解の妥当性を検証する。 実行については、免除の「人的」な把握にかねてより批判的な主張が多いフランスと、「人的」な把握に親和的な学説の多いドイツを取り上げることとする。
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研究実績の概要 |
裁判権免除は、被告の主体の性質を理由とする「人的」な制度とされるが、行為の性質を理由に「事項的」に免除を導出する「制限免除主義」が主流の現代において、免除制度の「人的」性格をなお維持すべきか、理論的な問題は残されている。 今年度は、「制限免除主義」たる免除制度の「人的」性格如何について学説上最も盛んに論じられてきたフランスを対象に、免除に「人的」性格を認めることの当否を検証した。フランスにおいては、主に国際私法学者によって、裁判所の管轄分配規則に倣って免除制度を捉える見方が強く主張されてきた。すなわち、フランス国内法上、司法裁判所と行政裁判所との間での管轄事項の振り分けが行われているように、他国の「主権的行為」についての裁判権の振り分けが国際法上行われている、との理解であり、そうした理解に基づいて、他国を訴えるという要件や、免除放棄の効力を否定する議論が一定程度有力に主張されていた。 こうした主張に対して、現行の免除制度になお「人的」性格を主張する論者は、①被告の地位のみに基づいて「人的」に免除が認められてきた「絶対免除主義」の時代から「制限免除主義」まで一貫して免除が認められてきた、という歴史的変遷の評価、②免除放棄を認める実行の存在、③国際法上の法主体を持たない主体、主に州の行為について免除が否定されていること、という三点を理由としていることが明らかになった。こうした学説対立より、「絶対免除主義」の理論的根拠を特定することが課題であることが示された。 「絶対免除主義」のリーディング・ケースがどのような理論的根拠に基づいて免除を導出しているか検討した結果、他国の「主権的行為」という行為の性質に鑑みて、いずれの国に裁判権が認められるか、という観点から免除が導出されており、フランスでは生成期より、被告の地位そのものから免除が導出されていたわけではないことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目標は、フランスにおける「絶対免除主義」のリーディング・ケースを網羅的に検証し、そこでの免除の理論的根拠を示すところまで検討を進めることであった。フランスにおける学説対立の争点の一つであった州の行為に免除を否定するケースについて検討を行うことはできなかったが、代表的なリーディング・ケースについては網羅的に検証することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度行うべき検証は以下の二点である。第一点目は、今年度行うことができなかった、州の行為に免除を否定するケースにおいて免除がどのような理論的根拠に基づくものとして観念され、免除を否定する根拠はどのようなものであったのか検証することである。 二点目は、「絶対免除主義」における免除の理論的根拠が、その後の展開においてどのように受け継がれていったのか(いかなかったのか)を検証し、現行制度に「人的」な性格を認めるべきか否か評価することである。そのため、「制限免除主義」のリーディング・ケースを丹念に検証する作業が次年度の主な課題である。
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