研究課題/領域番号 |
23K12378
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分05030:国際法学関連
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
鳥谷部 壌 摂南大学, 法学部, 講師 (40823802)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2027年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 親会社の注意義務 / 多国籍企業 / 親会社の本国 / 相当の注意 / 環境損害 / 域外的義務 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では次の3つの課題の解明に取り組む。第1の課題は、多国籍企業の親会社が受入国の現地子会社環境損害に対して「相当の注意」義務を負うとすればそれはいかなる内容のものかを究明すること。第2の課題は、現地子会社が引き起こした環境損害の被害者に対して受入国が十分な救済手段を提供できないとき、当該被害者に救済の道を開くべく、親会社の管轄国が負い得る「相当の注意」義務はどのようなものであるべきかを検討すること。第3の課題は、多国籍企業の親会社が現地子会社を事実上の支配下に置く場合、親会社の管轄国が当該子会社に「相当の注意」義務を負うとすれば、それはいかなる条件を満たすときかを検討すること、である。
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研究実績の概要 |
本研究は、多国籍企業の活動との関連で生じる環境損害の防止又は救済の問題を、企業及びその管轄国の「相当の注意」義務と責任の観点から統一的に検討しようとするものである。本研究の遂行にあたり、初年度にあたる2023年度は、多国籍企業の親会社が受入国の現地子会社の環境損害に対して「相当の注意」義務を負うとすればそれはいかなる内容のものか、を究明することに主眼をおいた。環境損害に対する多国籍企業の注意義務に関連する国際判例は現時点では見当たらない。しかし、国連人権理事会決議政府間ワーキング・グループ等において、ビジネスと人権に関する法典化作業が進行している状況に鑑み、各国の実行として国内裁判所の判例を検討することにした。多国籍企業の親会社の注意義務に言及した代表的な国内判例としては、Vedanta対Lungowe事件及びOkpabi対Shell事件の英国最高裁判決、オランダのハーグ裁判所のOguru対Shell事件(高裁)及びMilieudefensie対Shell事件(地裁)などがある。 そのうち、今年度は特に、Milieudefensie対Shell事件について分析・検討を行った。シェル社に対し、CO2排出量を2030年までに19年比で45%の削減を命じる判断を行った。本判決は、民間企業に対し具体的な削減義務を課す世界初の判断として注目されている。本研究との関連において本判決は、次のような点で画期的であると考えられる。上記45%の削減にあたり同社に生じる注意義務の範囲を、自社の排出量だけでなく、同社からみれば顧客にあたるサプライチェーンの排出量にも拡張したことである。同社が負うべきとされたこうした注意義務は、多国籍企業の現地子会社による環境損害および人権侵害に関し、親会社の責任(注意義務違反)の法的論拠を検討する上で、有意義であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の遂行にあたり、これに直接的に関連する条約や国際判例が豊富ではなく、現時点において、当研究課題に直接的に関連する条約や国際判例は見当たらず、若干のソフトローが存在し、また、条約・ソフトロー等の法典化作業が行われている段階である。そのように、国際法関連の研究素材が不足している中で研究課題を遂行していく必要がり、その多くの作業が、課題遂行者の専門領域ではない分野を扱う必要に迫られた。そのため、研究課題の解明がやや遅れているが、このことは裏を返せば、自身の専門領域や専門知識を拡げるチャンスでもあると捉え、他分野の開拓に臆することなく取り組んでいきたい。
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今後の研究の推進方策 |
多国籍企業の活動との関連で生じる環境損害の防止又は救済の問題を検討しようとする本研究は、「相当の注意」義務と責任の観点からさらに3つの小課題で構成されている。すなわち、第1は、親会社の子会社に対する注意義務、第2は、親会社の本国が当該親会社に及ぼすべき注意義務、第3は、親会社の本国が現地子会社に及ぼす注意義務、である。初年度は、上記1の課題に取り組んできたが、未だに検討は十分ではない。今後は、国連人権理事会で進められている、この分野の国際条約の起草作業に注意を払いつつ、上記2及び3の課題にも並行して取り組む。
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