研究課題/領域番号 |
23K12383
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分05050:刑事法学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
馬場 智大 京都大学, 法学研究科, 特定助教 (40912308)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 刑法 / 共犯 / 承継的共同正犯 / 包括的共謀 / 共同正犯 / 承継的共犯 / 共謀の射程 / 特殊詐欺 |
研究開始時の研究の概要 |
特殊詐欺の多くは組織的に実行されるため、その刑法的な処罰に当たっては、共犯論上の複雑な問題がしばしば生じる。たとえば、騙す行為が既に開始された後で受け子が詐欺計画に加わる場合や、関与者間で計画内容の認識に齟齬がある場合に、各人にいかなる範囲で共犯(共同正犯)が成立するかという問題である。本研究は、共謀への加担を通じて「結果発生の危険が増加されること」を共同正犯の根拠と捉える視点のもと、我が国およびドイツの議論の分析を通じて、「共謀による危険増加」の内実および限界を明らかにすることを目的とする。これにより、共犯理論の再検討に貢献し、特殊詐欺という現代的問題に際しての妥当な処罰範囲の提示を目指す。
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研究実績の概要 |
当初の研究計画では、本年度は、特殊詐欺において生じうる共犯論上の諸問題のうち、①承継的共犯の議論および②犯罪の「終了」に関わる議論について検討を進める予定であったが、前年度に「包括的共謀」の判例に関する研究会報告の機会を得たことからの延長で、当初の計画から順序を一部変更し、③「共謀の射程」の議論の検討の一環として予定していた包括的共謀についての研究を中心的に行った。すなわち、不特定多数の被害者に対して実行される組織的な特殊詐欺において、実行者・被害者等がその都度特定されるのではなく包括的な謀議が行われる場合に、いかなる形で共同正犯の成立範囲が画されるべきかについて、学説上の議論および日本における裁判例を主に分析しつつ検討を加えた。包括的共謀による共同正犯の成立については、従来の因果的共犯論からこれを説明する見解と、因果性とは異なる関与者間の主観的結びつきを基礎として包括的共謀を根拠づける見解とが唱えられているが、これらの当否を考察した結果、共同正犯において行為の共同(共謀)の問題と結果の帰属(因果性)の問題を区別し、前者のもたらす危険増加によって共同正犯の成立を説明する自説の枠組みは、包括的共謀を根拠づける上でも援用が可能なことが確認された。このような包括的共謀の議論に関しては、次年度に論文の執筆を予定している。 また、上記に並行して、従前から研究を進めてきた承継的共同正犯の議論についても、引き続き分析を行った。日本における最新の論稿や、ドイツにおける近年の判例・学説の動向等も確認しながら、承継的共同正犯の成立を部分的に肯定する自説について、個人責任原則への違反という批判に応えることにとくに重点を置いて、さらに議論を深めることを試みた。こうした承継的共同正犯に関わるこれまでの研究については、令和6年度開催の学会内のワークショップにおいても、その成果の一部を報告する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の順序に一部変更は生じたものの、今後の研究の基礎となる資料の収集および検討ができ、全体の進度としてはおおむね予定通りに進んでいるといえる。判例評釈1本および論文1本をそれぞれ公表したほか、当初予定していた海外出張(セミナーへの参加)も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画で予定していた承継的共犯および共謀の射程(ないし包括的共謀)の問題につき、より掘り下げて検討していく。また、本来は初年度に着手を予定していたが順序に変更が生じたことで次年度以降に見送っていた、犯罪の「終了」と共犯成立の限界の問題についても、主に承継的共犯の議論との関連の面において、とくにドイツの議論を参考にしながら分析を進める。
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