契約にもとづく債務が履行されない場合、債権者には、履行利益賠償(契約が履行されていればあったであろう利益状態を価値の形で実現すること)という救済手段が認められうる。他方で、契約を解除し、原状を回復する(契約がなければあったはずの原状を回復する)という救済手段も認められうる。両者は、契約の拘束力との関係において逆方向に向けられた救済手段であり、それが同時に主張された場合には、その効果には抵触が生じうる。その抵触はどのようにして解決されるのか。損害賠償法の効果を優先する形で解決されるのか、それとも、解除法の効果を優先する形で解決されるのか。本研究は、このような問題について検討を行うものである。
|