研究課題/領域番号 |
23K12395
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 広島修道大学 |
研究代表者 |
柳迫 周平 広島修道大学, 法学部, 助教 (10962524)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 民法 / 親子法 / 生殖補助医療 / フランス法 / 家族法 |
研究開始時の研究の概要 |
生殖補助医療により生まれた子の法的親子関係の確定について、従来は民法上の法的親子関係の2類型(実親子と養親子)のうち実親子に関する規律を原則として適用したうえで、それに一定の例外を設けることで対応してきた。しかし、このような方向性は理論的に適切なのだろうか。そこで、本研究ではこうした疑問を出発点として、フランス法との比較にもよりつつ、実親子の規定をこの場合に適用することの理論的な問題点を検証すると同時に、生殖補助医療により生まれた子の法的親子関係を実親子でも養親子でもない第3の新たな法的親子関係の類型を創設し、その枠内で規律する可能性はないのか、また可能である場合の具体的な規律内容を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究課題に関する2023年度の研究実績は主に次の3点である。 第1に当初の予定通り、既存の民法上の法的親子関係の一類型である実親子関係をめぐる日仏の現行法の構造とその制定過程、運用状況を調査したうえで実親子関係に関する規定により定まる法的親子関係の根拠とそこでの意思的要素の意義を検討し、その成果を日本家族〈社会と法〉学会第40回学術大会において個別報告を行った。 第2に、本研究課題の最終的な目標は生殖補助医療により生まれた子の法的親子関係を民法典上、実親子でも養親子でもない新たな法的親子関係の類型として位置付ける可能性がないのかという点を明らかにすることにあるところ、民法典における生殖補助医療により生まれた子の親子関係の位置づけに変動がみられた2021年8月2日の法律によるフランス生命倫理法改正の立法過程に関する資料の分析を行った。特に、法案の議会提出に至るまでに示された複数の報告書に加えて、議会における審議過程の分析も行い、この点に関してフランスではどのような議論が行われたということを整理した。その成果は、年度内の公表には至っていないが、24年度中に論文として公表することを目指していく。 第3に、自国で(事実上のレベルも含めて)禁止されている生殖補助医療技術を国外で利用し、授かった子について当該他国で認められた親子関係が自国でも承認されるべきかという国際民事手続法上の問題について、とりわけこの問題を処理するうえで、「子の利益」をどのように理解したうえで、考慮すべきかということをとりわけ代理出産のケースを念頭に検討した。その成果は、2022年12月に欧州委員会から域内で共通する規則を設ける提案がされていたところ、同提案に関する仏伊共同シンポジウムにおいて日本法の状況を踏まえた検討結果を両国の研究者に対して比較法的視点を提供するという目的で報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で示したように、従来生殖補助医療により生まれた子の親子関係について扱ってきた、実親子法の構造に関する分析を終え、成果も公表できたことにより、新たな親子関係の類型を創設する可能性を検討する必要性を論証することができたため、本研究課題に取り組むうえでの基礎的な作業を終えることができた。 また、新たな法的親子関係の類型の可能性を検討するための研究手法としてフランス法との比較研究を行うこととしていたところ、少なくともそのような可能性がフランスにおいて議論された2021年生命倫理法改正に関する分析は、成果公表には至っていないものの文献調査は一通り終わっており、おおむね当初の研究計画上の予定通りのペースで進んでいる。 そのため、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は主に2021年フランス生命倫理法改正における議論を素材として、生殖補助医療により生まれた子の法的親子関係を養親子でも実親子でもない新たな類型としてとらえることの理論的メリットと実践的な課題を明らかにしたうえで、わが国においてこの問題を検討する上での手がかりを得ていくとともに、その成果を論文として公表する。 加えて、従来わが国ではこのような子の法的親子関係を実親子として扱ってきたが、なぜほかの可能性が排除されていったのかということを、時系列的に文献調査を行ったうえで整理していく。
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