研究課題/領域番号 |
23K12405
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
河村 真実 東北学院大学, 地域総合学部, 講師 (30911242)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | リベラリズム / 多文化主義 / 集合的文化権 / パッテン / キムリッカ / 関係論的承認主義 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、文化維持に関する集団単位の権利(集合的文化権)の保障に対する根本的批判への応答可能性を検討することにより、リベラルな多文化主義の今日的擁護可能性を明らかにすることを目的とする。本研究では、多文化主義における集合的権利擁護論を、先住民等の文化的少数派に対して集合的文化権を保障すべきだと主張するキムリッカら第一世代と、一時労働者や難民等にまで権利主体を拡大し、より積極的な国家的支援が必要だと主張するパッテンら第二世代に区分し考察する。その上で、集合的文化権の意義それ自体を否定する批判論を考察し、反批判の可能性を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究では、①個人の諸自由と集合的文化権の両立可能性、②文化的少数派の受入国への定着と集合的文化権の両立可能性、③社会統合と集合的文化権の両立可能性等の論点に即して、文化維持に関する集合的文化権の保障に対する根本的批判への応答可能性を検討することにより、リベラルな多文化主義の今日的擁護可能性を明らかにする。今年度は、本研究における第一の論点である個人の諸自由と集合的文化権の両立可能性について、以下の考察を行った。 (1)まず、集合的文化権が個人の自由を侵害しうるという批判について検討した。その結果、少数派集団内の女性や子ども等の内部少数派に対する物理的・精神的抑圧行為を含む文化が集合的文化権によって国家から承認された場合、被害者となる女性や子どもの基本的諸自由が侵害されうるというフィリップスらの批判に加え、子どもへの少数派言語の強制が多数派社会での就職の機会など個人の将来の選択肢を奪いうるという批判等が、多文化主義に対して向けられることなど、重要な知見が得られた。 (2)さらに、こうした批判に対する多文化主義からの反批判の可能性を検討した。その結果、抑圧行為に対する法規制や、少数派言語の支援と並行した多数派言語習得の公的支援などの対応策が批判勢力により提示されている一方で、そうした具体的対応策が、多文化主義の議論において、どのように位置づけられるかという点については、更なる考察が不可欠であることなどが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、個人の諸自由と集合的文化権の両立可能性について、研究計画の段階で考察を予定していた主要論者のテキストの大半を分析し終わり、論争関係の解明に一定の見通しをつけることができた。しかしながら、研究を進める過程で、内部少数派に対する抑圧行為への対応策が多文化主義の議論において、どのように位置づけられるか明らかにするためには、当初予定していたよりも考察対象を拡大する必要があることが判明した。そのため、本研究における第一の論点である個人の諸自由と集合的文化権の両立可能性に関する資料収集と考察にやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、集合的文化権が個人の自由を侵害しうる可能性に関する資料を追加的に収集し考察を進めた上で、当初の計画に従い、本研究における第二の論点である文化的少数派の受入国への定着と集合的文化権の両立可能性について考察を行う。その上で、集合的文化権の保障に対する根本的批判への応答可能性を検討することにより、リベラルな多文化主義の今日的擁護可能性について考察を進める。
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