研究課題/領域番号 |
23K12415
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
于 海春 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 助教 (10928576)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 情報統制 / Weibo / 権威主義体制 / 感情温度 / 量的テキスト分析 / 危機対応 / 中国 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は新型コロナウイルス感染症対応における中国共産党による情報統制と権威主義体制の正統性の関係を明らかにすることを目的とする。本研究はソーシャルメディアデータの量的テキスト分析を通じて、感染症の異なる段階におけるネット世論の変化を実証的に示し、中国共産党の危機対応に対する情報統制の程度を解明する。その上で、権威主義体制への信頼度指標を従属変数として取り入れて、情報統制が権威主義体制の正統性にもたらす短期・長期的な効果を検証する。本研究は権威主義体制の正統性の維持に関する研究に新たな証拠を示すことで貢献し、今後権威主義体制国家間での比較分析へと繋がっていく研究であると見込まれる。
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研究実績の概要 |
2023年度では、Weiboデータの収集と分析を行い、分析結果の一部に基づき、査読誌に論文を掲載する予定である。「権威主義体制国家における情報統制:武漢『封鎖』に対するインターネット上の感情温度の分析から」と題して、『日本比較政治学会年報』26号に掲載する予定である。 本研究は、ソーシャルメディアデータの量的テキスト分析を通じて、新型コロナウイルス感染症蔓延の初期段階におけるネット世論の変化を実証的に示し、中国共産党の危機対応に対する情報統制の程度を解明した。中国共産党が党と政府を応援する声を動員し増幅することで批判的なコメントへの大衆の注目や影響力を打ち消す手段が用いられているという先行研究の指摘を参考に、本分析では、「応援・称賛・感謝」対「怒り・不満・批判」という対立軸をもとに教師データを選定し、感情を分析した。本研究は武漢「封鎖」を事例として、ウェイボー(Weibo)上のコロナに関する投稿を分析対象とした。具体的には、オンライン上で公開されている二つのデータセット(それぞれ検閲前と検閲後に収集されたデータ)からの 500万以上のWeibo投稿を対象に、半教師あり学習の手法を用いて比較分析を行った。 分析から得られた発見は次の二つである。一つ目に、「封鎖」の実施前後で国民の激しい感情変化が見られた。また、感情の変化は、「感謝・応援・称賛」を込めた大量の投稿が意図的に拡散されていたこと、「怒り・不満・批判」を含む投稿が削除されていたことと関連していることがわかった。二つ目に、2020年3月末、政府の強力なコロナ対応が成果を上げたことに伴って、国民感情がポジティブな方向へと大きく変化する傾向があった。以上の発見から武漢「封鎖」においては、中国共産党と政府は感染症対応とともに情報操作を通じて短期的に権威主義体制の正統性を向上させたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度では、情報統制が権威主義体制の正統性にもたらす短期的な効果を中心に検証した。研究課題①ネット世論の変化の解明、研究課題②情報統制の度合いの検証、の二つを中心に実証分析を行い、査読誌に論文を掲載することができた。現状研究進捗は当初の研究計画に沿ったもので、研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
これまで情報統制が権威主義体制の正統性にもたらす短期的な効果を中心に分析したが、今後長期的効果を分析する予定である。引き続き新型コロナウイルス感染症対応をめぐるWeiboデータを収集し、量的テキスト分析を進める。
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