研究課題/領域番号 |
23K12441
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07010:理論経済学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小寺 寛彰 東北大学, 経済学研究科, 講師 (60881828)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 出生率 / 母親の労働参加率 / 家族政策 / 出世率 / 母親の労働参加 |
研究開始時の研究の概要 |
出生率と母親の労働参加率、そして出生率との関係性を明らかにするため、まず、家計の異質性を考慮した世代重複モデルを構築する。モデルの主な特徴は、男女の異質性を取り入れること、そして、夫婦が何人子供を産むのかという意思決定を考える点である。更に、そのモデルの中に家族政策を組み込むことで、三つの関係性をモデルの中で表現することができる。その後、パラメーターを設定し、モデルで得られた各国の母親の労働参加率と出生率が、データと一致するかを確認する。その後、シミュレーション分析では、国ごとに異なる家族政策を同一にした場合の母親の労働参加率と出生の変化を検証する予定である。
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研究実績の概要 |
欧米諸国の母親の労働参加率と家族政策への支出割合、そして出生率と家族政策への支出割合をそれぞれプロットすると、どちらも正の相関関係を持つことは知られた事実である。ここから、「国レベルでは家族政策への支出割合を増やすと、母親の労働参加率、そして出生率が高くなる」という仮説が考えられる。既存研究では、国レベルでの家族政策と母親の労働参加率との関係性までは検証されてきたが、出生率との関係性まで踏み込んだ研究は皆無である。そこで本研究は、家族政策と出生率との関係性にも焦点をあてた分析を行う。具体的には、次の二つの問いに答える。(i)家族政策を取り入れた、動学一般均衡のマクロモデルを用いて、国レベルでの家族政策の割合と母親の労働参加率、および出生率のバラツキをデータのように再現することができるだろうか、ii)例えば、家族政策を重点的に行っているスウェーデンのような政策を他の国に適用した場合、スウェーデンと同レベルの母親の労働参加率と出生率を実現することができるだろうか。もし実現できないのであれば、何が障壁となっているのであろうか。 分析のために、まずモデルを構築する。モデルは、家計の異質性を考慮した世代重複モデルである。今回のモデルは、二つのタイプの家計が存在する。一つは、既婚の夫婦、もう一つは独身の男女である。各コーホートで教育水準、資産、そして生涯の平均所得が異なると仮定し、それらの家計が毎期毎期、今期の消費、男女の働く意思決定や労働時間、そして来期のための資産を選択する。加えて今回は出生率も重要なマクロ変数であるため、初期時点で家計が子供の数を選択できるようにする。更に、育児費用や税制度も組み込むことで、家族政策も考慮している。 次に、構築したモデルのパラメーターを設定する。ここではアメリカのデータを用いて、パラメーターの設定を行う。現在この分析を行っている所である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回の分析では、出生率が重要なマクロ変数であるため、各家計の子供の人数は内生化されている。このため、母親の労働参加率のみならず出生率も現実経済のそれらと一致させるように、モデルのパラーメータを設定しなくてはいけない。しかし、現在の所、母親の労働参加率に関してはデータのそれと一致させることは成功したのだが、出生率に関してはうまく一致させることができていない。そのため、例えばモデルの家計の異質性を増やしたり(例えば、教育の異質性)、子供の数の意思決定のタイミングを変えたりする等してモデルの構造を変えなくてはいけない。その上で再度、パラメーターの設定のために幾度も計算するという作業を行うため、この作業にかなりの時間を要しているのが現状である。 本来の計画では、本年中に米国の母親の労働参加率と出生率がデータのそれと一致させる作業までは完了させる予定であった。したがって、進捗状況はあんまり芳しくないと言わざるを得ない。しかし、本年度末になって、出生率に関してデータとマッチさせる作業にある程度目途が立ってきた。そのため、来年度は他の西欧諸国での分析に作業が移すことができると確信する。したがって、「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
前述のように、アメリカの出生率に関してデータのそれと一致させる作業がまだ終わっていないので、その作業を終わらせることが第一の作業となる。その後、得られたパラメーターを所与に、国それぞれで異なる外生要因を入れ、そこから得られた各国の母親の労働参加率と家族政策の支出割合との関係性、および出生率と家族政策の支出割合との関係性がデータのそれと一致するかを検証する。この分析では、国ごとに異なる外生要因の絞り込みを慎重に行わなくてはいけない。まず、各国で家族政策は異なるため、この要素は絶対に外せない。しかし、これだけでは、データで示される、国ごとの両者のバラツキを説明できない恐れがある。その場合には、他の外生要因を国ごとに変える必要がある。例えば、所得税における課税制度、消費税が候補となる。なお、対象国は今回の分析では西欧諸国だけに絞る予定である。当初は日本も対象国に入れていた。しかし最近の研究で西欧諸国の出生率のパターンと日本や韓国といった東アジア諸国とのそれは異なることが指摘されているため、これらの国を含めてしまうとモデルの説明力を下げてしまう恐れがある。したがって、現段階では日本を含めないで分析を行う予定である。この作業を終わらせることが、今年度の目標である。 もしこの作業が早く終わった場合には、シミュレーション分析に移る。現時点で考えているシミュレーション分析は、国ごとに異なる家族政策を同じにした場合の分析である。例えばスウェーデンのような手厚い家族政策を、全ての国に適用した場合、各国の母親の労働参加率、出生率がどう変化するかを検証する。そして、仮にスウェーデンと似たような母親の労働参加率と出生率に至らなかった場合には、その要因も併せて分析する。具体的には、国ごとに異なる外生要因のうちどの要因が上昇を妨げているのかを明らかにしたい。
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