研究課題/領域番号 |
23K12465
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
松田 一茂 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 准教授 (60867167)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | マクロ経済学 / 経済成長 |
研究開始時の研究の概要 |
生産性を上げるためには、研究開発による技術の発展が重要である。他の研究の土台ともなりうる基礎研究は特に重要であり、大学による基礎研究が重要となる。国全体での大学の基礎研究のアウトプットがどのくらいになるのか、どのようなマクロ政策が望ましいのかを考えるのが本研究である。そのために大学が基礎研究の量を決定するモデルを作り、大学間の格差や競争状況によって大学が基礎研究の量を変化させるモデルを構築し、さまざまな政策をシミュレートする。それによってどのような大学研究の補助金体系が望ましいのかを知ることができる。
|
研究実績の概要 |
生産性向上のためには、技術革新が不可欠であり、その基盤となる基礎研究は特に重要となる。大学による基礎研究は、他の研究の基盤となるだけでなく、国全体の発展にも寄与する。本研究では、国全体の大学における基礎研究のアウトプットがどのように決定されるかを、マクロ政策の観点から考察する。具体的には、大学が基礎研究の量を決定するモデルを作成し、大学間の格差や競争状況に応じて基礎研究の量を変化させるモデルを構築し、さまざまな政策シナリオをシミュレートする。これにより、効果的な大学研究の補助金体系を検討する。 本年度は大学における研究活動のインセンティブについて、制度やマクロ経済環境がどのように影響を与えるかを調査した。この研究は、国際学術誌に投稿されている。さらに、国内外の研究者からのアドバイスを得ることができた。本年度ではフィレンツェの欧州大学院のワークショップにおいてこの研究の報告を行い、欧州大学院の研究者と意見交換を行うことができた。 平均的な支出額の変化だけでなく、有名大学への研究補助金の集中を止めた場合の効果や、社会全体への影響もシミュレートした。さらに、教育への補助金(奨学金)が授業料を通じて研究への支出額にどのように影響するかも検証した。結果として、大学間の格差を助長するような研究補助金体系は望ましくないことがわかった。教育への再分配的な奨学金が大学間の格差を減らし、さらに研究活動を促進することがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アメリカ全土の大学に関するマイクロデータを使用し、さまざまな事実を検証した。例えば、大学の研究活動と授業料、学生の平均的な能力との相関関係を調査した。さらに、因果関係を確認するために、ある期間にアメリカで政府の補助金が二倍になったという自然実験を利用し、大学の研究活動が将来の授業料や平均的な学生の能力に影響を与えることがわかった。 次に、家計と大学に異質性があるマクロモデルを構築した。各家計には親と子が存在し、親の所得と子供の高校卒業時の能力に異質性がある。子供が良い大学に進学することで、将来その子供が親になった時の所得が増えるように設計した。大学は自身の教育の質の割引現在価値を最大化すると仮定した。大学の無形資産には、これまでの知識や評判が反映されており、この無形資産と教育への支出、在学する学生の能力が教育の質を決定する。 大学は、授業料収入を内生的に今期の教育への支出と将来の無形資産蓄積のための研究への支出に振り分ける。大学は政策や経済環境に応じて研究への支出額を再配分するため、内生的に大学の研究活動をモデル化することが重要となる。マイクロデータを使い推定されたモデルを使って、研究への補助金の数量的な効果を調査した。これらは当初の目標の1/3以上の進捗となっている。
|
今後の研究の推進方策 |
第2年目には、アメリカとヨーロッパを比較することで、大学の研究への支出額の違いについてモデルを通じて考察する。予想としては、ヨーロッパは大学が自身で授業料を決めることができないので、アメリカと比較して研究活動を行うインセンティブが低くなることが予想される。第3年目には、国内や海外の研究者との議論を通じてさらに論文をブラッシュアップし、論文の国際誌への出版を目指す。
|