研究課題/領域番号 |
23K12490
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07050:公共経済および労働経済関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
高橋 雅生 上智大学, 経済学部, 助教 (20864599)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2027年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 介護保険 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、高齢者の身体機能および認知機能が「健康への投資」のインセンティブにどのように影響するのかを分析する。これまでの健康投資に関する研究では、血圧などの医学的指標が健康づくりに与える影響が分析されてきたが一方、日々の生活に関わる身体・認知機能については観察することが難しいこともあり、それらが健康への投資に与える影響はほとんど分析されてこなかった。高齢期における身体・認知機能の衰えは加齢による避けがたいリスクであり、身体・認知機能の変化が健康への投資にかかわる意思決定にどのように影響するのかを分析することで、既存研究では分析されてこなかった健康づくりの要因が明らかになることが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究は、加齢による身体機能および認知機能の変化が介護サービスの利用にどのような影響を与えるのかを明らかにし、健康寿命の増進に資する医療・介護保険制度の構築に貢献することを目指す。介護保険においては、利用者の日常生活を補助する「介助サービス」だけでなく、身体機能の維持や向上を目的とした「機能訓練」が提供されており、利用者の健康維持が重要な政策目標となっている。本研究では、自治体の介護保険データに含まれる詳細な身体機能および認知機能に関する情報を用い、利用者の健康状態の変化が介助サービスおよび機能訓練の利用にどのような影響を与えるのかを分析する。また、異なる健康状態の利用者に対してどのように給付を割り当てることが望ましいかに関する厚生分析を行い、高齢者の健康維持・向上を促進する政策を提案することを目標とする。 これまで、日本の介護保険制度において利用者が介護サービス利用を決定する際の経済的なインセンティブについて研究を行ってきた。介護保険では、利用できる介護サービスは介護必要度に基づいて分けられた「要介護区分」によって定められ、区分が高いほど給付水準も高くなる。これまでの研究によって、給付水準が介護サービス利用を統計的に有意に変化させていることを明らかにした。 一方、現状の給付水準が各要介護区分の利用者にとって望ましい水準になっているかどうかは未解決の問題として残されている。2000年に介護保険制度が創設されてから四半世紀近くが経過しているものの、給付水準についてはほとんど変化しておらず、またどのように給付水準を設定すべきかに関する議論も深まっているとは言い難い。本研究の厚生分析を通して、異なる健康状態の利用者にどのように介護保険の資源を配分することが望ましいかを明らかにすることを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
介護保険における給付水準の望ましさを分析するには、利用者が特定の給付水準に応じてどのように介護サービスを利用するかに関する経済モデルを構築する必要がある。本研究では、Marginal Value of Public Funds (MVPF) に関する先行研究を参考に、介護保険の給付水準を高めたときのコストとベネフィットを定量化するための経済モデルを構築した。給付水準を高めることのコストは、利用者のサービス利用が変化しなかった場合に増えるコストと、給付水準の変化に対して利用者がサービス利用を変化させるコストの双方によって生じる。また、給付水準を高めることのベネフィットは、利用者の消費に対する限界効用を通して生じる。今後の研究では、構築した経済モデルをもとに給付水準が利用者の厚生に与える影響を定量化することを目指す。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、経済モデルの改良とデータを使った厚生分析を同時並行で進めていく予定である。現状のモデルはシンプルなものとなっているため、実際の介護保険によりあてはまるようにモデルを改良する予定である。モデルによって厚生分析に必要な統計量が明らかになるため、複数の自治体から得た介護保険データを使って、どのように給付水準を設定すれば介護保険利用者の厚生が改善するかに関する分析を進めることを予定している。
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