研究課題/領域番号 |
23K12583
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07100:会計学関連
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
塚原 慎 駒澤大学, 経営学部, 准教授 (90806374)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 資本会計 / 負債と持分双方の性質を有する金融商品 / 優先株式 / リストラクチャリング / 債務の株式化 / 最適資本構成 / 増資 / 資本の性質を有する金融商品 / 負債と持分の区分 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,日本企業による「資本の性質を有する金融商品(Financial Instruments with Characteristics of Equity: FICE)」を用いた「増資」行動に着目し,企業が当該金融商品を用いる経済的動機を実証的に解明するとともに,当該資本政策の実施がその後の企業業績とどのような関係を有しているのか,投資者等の利害関係者に及ぼす中長期的な影響はどのようなものであるのかについて,アーカイバル・データを用いた実証分析を実施する。特に,財務報告に際する会計数値の裁量的な調整を目的として経営者がFICEを用いる可能性に主たる関心を向けた検証を行う。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,「資本の性質を有する金融商品(以下,FICE)」を用いた増資を実施する企業の経済的特徴を明らかにするとともに,当該資本政策の実施が発行企業および利害関係者に及ぼす短期・中長期的な影響を実証的に解明することにある。初年度である2023年度においては,以下を実施した。 第1に,FICEの一種である優先株式を用いた増資を行う企業,なかでも当該金融商品を用い「債務の株式化」を実施する企業の経済的特徴について調査した応募者の研究(塚原,2023「優先株式を用いた債務の株式化実施企業の財務的特徴」『経済科学』第70巻第3号,pp.59-75)で用いた検証サンプルの開示資料等を精査し,FICE活用企業の経済的特徴に関する実態調査を進めた。日本においては,FICEを用いた増資は平均的に財務困窮企業によってなされており,「債務の株式化」を目的とする企業においてはその状況がより深刻であることを改めて確認するとともに,資本政策後の市場反応等も予備的に検証した。 第2に,FICEによる増資企業の特徴を把握する上での比較対象として,資本構成の調整(債務の返済:リストラクチャリング)を目的とした普通株式発行企業に着目し,国内外の先行研究のレビューを行うとともに,予備的な検証を実施した。予備的な分析の結果については,研究会報告(第31回現代資本会計研究会,「負債減少型のリストラクチャリングを目的とした増資行動に関する実態調査」)等を通じ,資本会計を専門の研究領域とする研究者からのコメント,フィードバックを頂くことができた。 現在は,リストラクチャリングを目的とした増資企業が有する経済的特徴,および増資手段の差異(普通株式,FICE)をもたらす要因が何であり,どのような経済的影響を及ぼすのかについて,検証を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は,FICE増資を行う企業の経済的特徴を検証するためのデータ・セットを構築するとともに,比較対象とするため,普通株式を用いたリストラクチャリング増資企業に関する検証データ・セットを構築し,実態調査を進めることが出来た。また,資本構成に関心を向けた増資行動(リストラクチャリング増資)に関する国内外の研究流列を整理し,国際的な動向(米国と非米国諸国において差異が存在していること等)を見いだすことが出来た。 また,構築したデータ・セットをもとに予備的な検証を行い,負債減少型のリストラクチャリングを目的とした増資行動に関する実態調査についての研究報告の機会を得,資本会計を専門領域とする研究者から有益なコメントを頂き,検証を行う上で考慮すべき論点,仮説構築の背後にある基礎をより精緻なものとする必要性を認識することが出来た。 以上から,学会報告,そして最終成果となる論文公表には至っていないものの,基礎となる背景の整理,実態調査を進めることが出来たことから,進捗状況としては,概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
日本におけるFICE(優先株式)を活用した増資企業の多くは財務的に困窮状態にあり,当該資本政策を行う企業の主なねらいは,財務体質の健全化を目指すこと,当座の倒産を回避することが念頭にあることが想定される。このような傾向は,「債務の株式化」が明示的に表明されているサンプルに限らず,FICE増資を行う企業に平均的に見られる傾向であった。これに対し,筆者が行った現時点での実態調査に基づくと,普通株式を発行した資金を債務の返済に充てる企業(リストラクチャリング増資企業)の財務的特徴は,FICE増資企業と必ずしも同質的とはいえないことが示唆された。したがって,当座の倒産を回避するための最後の手段という可能性の他にも,リストラクチャリング増資を行う企業が想定する何らかの経済的動機が背後に存在することが考えられる。本稿の主たる検討対象はFICEを用いた増資行動にあるが,検証対象を拡張し,「債務の株式化(実質的なものも含める)」を行う増資企業を母集団として,さらに精緻な検証を進めることで,FICEを活用した企業が有する経済的動機,そしてその影響(ねらい)を実証的に描写することを試みる。 分析・検証から得られた成果は国内外の研究会で報告し研究者からのフィードバックを受けるとともに,査読付国際学会報告,査読付雑誌への投稿を行うための準備を進めていく。
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