研究課題/領域番号 |
23K12620
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
石島 健太郎 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (70806364)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2027年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ALS / 難病 / 介助 / 医療化 / 感情管理 / 障害 / 情動静止困難 |
研究開始時の研究の概要 |
物事が医学の語彙や発想で捉えられるようになる現象である医療化については、近年ではとくにミクロな相互行為の水準で、個人によって駆動される側面が注目されている。しかし、医師患者関係での相互行為が注目される一方で、日常的な生活場面での医療化をめぐる個人の交渉の様子は十分に検討されてこなかった。障害者・慢性疾患の患者が増える中で、地域包括ケアが謳われる現在、むしろ日常での医療化を検討する必要がある。本研究では、筋萎縮性側索硬化症について新たに「発見」された易怒性という症状を対象に、この新しい知識が日常の介助場面で患者や介助者によっていかに参照されているのかを問う。
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研究実績の概要 |
筋萎縮に伴う身体障害がおもな症状として理解されてきた難病のALSにおいて、その患者に「怒りっぽい」「こだわりが強い」といった傾向があることは経験的に知られてきたが、近年になってこれを説明する医学的知識が登場している。本研究課題は、こうした新しい医学的知識が介助の現場においてどのように参照され、介助臨床の秩序に影響を与えるのかを検討するものである。 今年度は、こうした研究課題全体の大きな問いのうち、とくに介助者によって新出の医学的知識が介助の中でどのように参照されているのかに注目し、聞き取り調査のデータを踏まえて論文の執筆を行った。そこでは、医学的知識によって患者の精神症状を説明することが、怒りすらも情報資源として患者のニーズを汲み取るという介助者専門職倫理とのあいだで葛藤をもたらすことが明らかとなった。これは従来の医療化論が注目してきた診断や医学的知識をめぐる交渉が医師患者関係以外にも生じることを示しており、また医学化による免責が機能しづらく感情管理を困難にするといった点でも従来の研究にない新奇の論点を提示している。実践的にも、単に症状に関する科学的に正しい知識を身につけることによって対処が用意になるとしてきた保健学・看護学での議論に対し、むしろ知識を身につけるからこそ生じる葛藤があることを明らかにしており、介助実践における緊張関係をより精緻に描き出すことに成功している。本論文は現在査読中で、2024年度以降の掲載を目指す。 このほか、研究課題全体の理論的背景となる内外の論文の渉猟を勤務校の大学院生とともに進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定通り、介助者側に注目した調査を進め、論文を執筆・投稿した。こちらは現在査読中である。 また、2024年度以降の調査に向けて、所属機関内の倫理審査での承認を得るとともに、関連する文献の渉猟を進めた。 具体的には、勤務校の大学院ゼミにて、医療を要する障害者を扱った諸研究や、ポストヒューマン障害学など、本研究課題に関連する文献を読み進めたほか、合わせて獲得した独立研究基盤形成支援の予算を用いてジャーナルクラブを運営し、内外の研究動向の調査と情報共有を行った。 以上から、おおむね計画通りに研究を進められているものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
投稿中の論文の査読対応を進めつつ、掲載を目指す。2024年度以降は介助者と合わせて患者についての調査も実施する。その結果を踏まえ、まずは日本社会学会等の国内学会での報告ののち、論文執筆を行う。また、勤務校での大学院ゼミを通じて引き続き文献渉猟を行い、直近の国際的な研究動向における本研究の位置付けを明確にする。
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