研究課題/領域番号 |
23K12621
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
馬渡 玲欧 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 講師 (80964775)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ニール・ブレナー / 批判的都市理論 / 広範囲の都市化 / 離島研究 / 廃棄物処理 / 原状回復 / 国立公園 / 都市化 / 自然環境 / 離島地域 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、「自然の生産」をめぐる理論・実証研究を行なう。自然環境や、惑星規模で広がる銅製錬の空間が、ある地域においてどのように資本蓄積をもたらしてきたかを明らかにする。特に「広範囲の都市化」の過程に自然環境や資源採掘が組み込まれ、生産力と化していく様相に着目する。計画として(1)「自然の生産」の理論研究を批判的都市理論の動向を参考に行なう。(2)「自然の生産」の実証研究を産業廃棄物不法投棄事件が起こった香川県豊島、豊島の廃棄物処理を請負うことになった直島の事例調査を基に行なう。(3)最後に「民主的な自然の生産」の可能性を豊島の「原状回復」構想に着目し検討する。
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研究実績の概要 |
・2023年度は、XX ISA World Congress of Sociologyで学会報告する機会を得、香川県直島に所在するA社の銅製錬事業の歴史と、金属リサイクル事業に関する現代的展開について紹介した。そのうえで、事例をMartin Alboleda、Mazen LabbanのPlanetary Mine論を参照しつつ、惑星規模で広がる銅製錬のロジスティクスや都市鉱山の動向に位置づけることを試みた。 ・次に、香川県豊島の産業廃棄物不法投棄事件の「原状回復」の構想について、廃棄物処理協議会の住民・県のやりとりや、新聞記事を参照しながら、整理する作業を引き続き行った。とりわけ住民側の「原状回復」構想の中核と微妙な変遷について、第96回日本社会学会大会で報告した。 ・また、「原状回復」構想の基盤となる「瀬戸内海国立公園」の位置づけについて、そもそも瀬戸内海国立公園が近現代日本においてどのような空間・場所であるのか、日本の国立公園成立の歴史に遡って確認する作業を行った。成果の一端については、『人間文化研究所年報』に掲載した。 ・最後に、批判的都市理論の近年の動向について、Neil Brenner(ニール・ブレナー)のCritique of Urbanizationの読解を進めた。特に、ブレナーの理論における「批判」の含意について考察し、名古屋市立大学・文藻外語大学学術交流会にて報告を行った。特に、惑星規模の都市化を背景とした、現代の都市編成に対する「批判」に関してと、都市の変容から生じ共進化する「問題構制」によって変動する「批判」を追跡するブレナーの目論見について、報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
十分な研究成果の公刊にはたどり着けなかったが、豊島でのフィールドワーク、香川県立図書館での資料調査、定期的な研究構想の検討会開催も加味し、一定程度の進捗を得ることはできたと考える。しかし、当初のNeil Smith(ニール・スミス)の議論の検討については、AlboledaやBrennerの議論の検討を先に進めた結果として、2023年度は手薄となった。
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今後の研究の推進方策 |
・2024年度は、2023年度の学会報告の論文化作業を進めていきたい。また、豊島・直島でのフィールドワークを継続する。 ・瀬戸内海国立公園の法律上の位置づけや、国立公園法の果たす役割について、近現代日本の空間編成、空間の利用と保護の観点から、検討を進め、産廃処分地の「原状回復」の含意をより明確にする。 ・直島のA社に関する歴史と地域に与えた影響について、日本の資本主義の展開にA社が果たした役割を踏まえつつ、社史等の関連資料を幅広く収集し、検討する。 ・2023年度に香川県立図書館で収集した、1990年代・豊島の離島活性化計画に関する資料を検討する。特に豊島の石材業に関する歴史について調査を進める。その作業を通して、資源採掘によって都市化のプロセスの一端を支えた離島の石材業に関する理解を深め、可能であれば当該事例と批判的都市理論の擦り合わせを行う。 ・Alboleda、Brennerだけでなく、Neil Smithの議論の検討、理論の形成過程についての検討を行う。 ・批判的都市理論の動向だけでなく、瀬戸内海周辺を事例とした地域社会学研究の動向を確認する。
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