研究課題
若手研究
本研究では、日本の知的障害特別支援学校において、知的障害者のサイン(手話)が児童生徒(当事者)の意思表出・決定の権利を担保する「言語」として十分に認知されておらず、教育内容や合理的配慮の外に置かれがちであるとの問題意識から、学校・学部組織としてサイン言語教育を展開していく過程に関して学術的に解明することを試みる。本研究に取り組むにあたっては、「学校文化(学校組織の文化)」の在り様や変容に着目する。
日本の知的障害特別支援学校においては、知的障害者のサイン(手話)が児童生徒(当事者)の意思表出・決定の権利を担保する「言語」として十分に認知されておらず、教育内容や合理的配慮の外に置かれがちな状況がある。こうした状況を背景に、本研究は、日本の知的障害特別支援学校が、学校・学部組織としてサイン言語教育を展開していく過程に関して学術的に明らかにすることを目的としている。初年度にあたる2023年度は、以下の3点を中心として研究を進めてきた。第一に、知的障害者のサイン言語と聴覚障害者の手話に関する先行研究の収集とレビューを行った。具体的には、マカトン法、日本手話、日本語対応手話に関する国内外の先行研究を収集してレビューを行い、コード化とカテゴリー化の作業を行った。第二に、海外の特別学校1校においてサイン言語教育の実践に関する調査を行った。具体的には、オーストラリアのクイーンズランド州の学校を訪問し、視察を行った。児童生徒へのサイン言語教育の内容のみならず、学校全体を通した研修の実施内容や支援方法の一貫性の保持のための工夫について把握することができた。第三に、国内の特別支援学校1校においてサイン言語教育の実践に関する調査を行った。サイン言語教育の校内普及を牽引するキーパーソンの在/不在やPTAなどの保護者の巻き込み具合、聴覚障害を有する子ども(他障害との重複障害の子どもを含む)が在籍しているかどうかによって相当に取り組みの温度や進捗具合が変わってくることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
2023年度に計画していた、①知的障害者のサイン言語と聴覚障害者の手話に関する先行研究の収集と分析、②海外(オーストラリア)の特別学校の訪問調査、③国内の特別支援学校の訪問調査に関して、いずれも、順調かつ着実に実施することができた。ただし、②③に関しては実態としては概要レベルの把握に留まっている状況があり、2024年度により内実にコミットするような調査を実施することが求められる。
2024年度は、本科研の3年目にあたる。当初の計画の趣旨に従って、次の2点に関して取り組みたい。(1)オーストラリアと国内で追加調査を実施し、とりわけ教職員へのインタビューを実施する。(2)新たにマカトン法の母国であるイギリスにおいて訪問調査を実施する。
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SNEジャーナル
巻: 29 ページ: 1-6