研究課題/領域番号 |
23K12731
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09020:教育社会学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩渕 和祥 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 助教 (90967001)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 政治主導 / 政策過程 / グローバル人材 / 自治体 / エリート教育 / 卓越と平等 |
研究開始時の研究の概要 |
2010年代より日本ではグローバル人材の育成が目指されてきた。日系企業の海外支社での幹部級人材育成という産業界の意向を反映した政策にはエリート教育の志向性が認められる。本研究では、このようにエリート教育の性格を持ちうるグローバル人材育成の導入において、自治体がどのような役割を果たしたのか明らかにする。思考力に重きを置く特徴的なプログラムで知られる国際バカロレア校に着目し、それを導入した自治体に対し質問紙調査を実施し、その導入の意図や、導入がどのような要素に影響を受けているのか明らかにする。また、なぜその意図を持ちうるか、なぜそうした要素が影響するのかについて、インタビュー調査でさらに追究する。
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研究実績の概要 |
2010年代より日本ではグローバル人材の育成が政策として推進されてきた。背景の一つとして日系企業の海外支社に必要な幹部級人材育成という産業界の意向がある。本研究では、このようにエリート教育の性格を持ちうるグローバル人材育成のうち、特に国際バカロレア(IB)の導入において自治体がどのような役割を果たしたのかを明らかにすることを目指している。 実施計画では、計画1年目にあたる2023年度に文献資料の収集と自治体への事前の聞き取り調査を実施する予定であった。 その下準備として、IB校が置かれている自治体のデータベースを作成した。これらの自治体のIB校の数、設置年度、関係予算額などのデータを収集した。また、各自治体の議会の議事録においてIBがどのように議論されているかを調べた。これにより、いくつかの自治体で首長がその導入を主導したケースがあることが明らかになった。内閣主導の政策過程がIB導入に影響を与えたことが指摘されているが、自治体レベルでも政治主導の政策過程が影響していることが示唆された。 グローバル人材育成についてはマクロな政策過程、現場の実践というミクロなレベルの両面から研究がなされてきたが、自治体というメゾレベルの研究は少なく、本研究が嚆矢をなす。また、教育行政研究においては自治体レベルの研究も多くなされてきたが、グローバル人材の育成という事例はあまり扱われてきておらず、他の事例との比較研究の途を開くものである。 上述のように作成した資料ベースのサーベイでは、文科省や教育委員会の関与などは明らかでない。また、IB教育をどのような観点から正当化したのか(探究型教育、エリート教育など)についても詳細な調査が必要である。これらの点を明らかにするためにも、質問紙調査、インタビューを実施する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遅れている理由として2点が挙げられる。第一に、自治体の担当者とのコンタクトを取る作業に時間がかかってしまっている点である。 第二に、自治体で当該政策に関与しているアクターが複数いる場合、それぞれがどのような関わり方をしているのかを明らかにするのに時間がかかってしまっている点が挙げられる。本研究ではこれらのアクターの間の協働・対立などにも着目する必要があり、聞き取り調査を実施する前に可能な限り文献でそれぞれの関係を明らかにすることを試みたが、それにより聞き取り調査が遅れてしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に遅れがみられるとはいえ、研究自体の方向性には変更はない。実施予定であったインタビュー調査、ならびに質問紙調査をしっかりと実施できるよう準備を進めていく。質問紙調査では、これまでの文献資料調査で明らかにできていない部分(例えば、進学実績や関わる教員の数など)について明らかにすることを目指す。インタビュー調査では、文献資料調査で明らかになった点が、そもそも実際の過程を反映したものなのか、反映しているとすればそれがどのような要因で生じたのか、あるいは、文献資料には表れていない側面(例えば関係者間での対立)があるのか、などについて関係者の認識を調査する。調査と並行して、収集したデータについて分析を行い、また、その研究成果の発表を年度内に行う予定である。
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