研究課題/領域番号 |
23K12761
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
佐藤 絵里子 弘前大学, 教育学部, 准教授 (60828721)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 造形遊び / 評価 / 図画工作科 / 図画工作 / 目標設定 |
研究開始時の研究の概要 |
子どもの主体性を育成するために、アートのもつ教育的機能に注目し、図画工作科の「造形遊び」の目標設定原理を解明する必要がある。しかし、アートと教科の関係性を論じた研究は希少である。そのため本研究では、「造形遊び」で重視される価値生成を「表現の弁証法」によって説明し、実践に対する分析枠組みとして応用する。本研究の目的は「造形遊び」の目標設定原理を表現の弁証法によって理論化し、授業の場で児童が「よさ」の感覚・イメージを探求する姿を、同原理によって分析することである。加えて、教育現場の実情や申請者が作成した評価モデルの意義を質問調査によって解明する。
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研究実績の概要 |
2023年度は3年間にわたる本研究課題の補助期間の初年度にあたっており、文献調査と実践的調査を実施した。その内、前者についてはカント『判断力批判』(中山訳・2023)、シラー『人間の美的教育について』(小栗訳・2017)、ハンナ・アレント『人間の条件』(志水訳・1994)等の文献について調べた。 後者の実践的調査の成果については、2024年3月2日に美術科教育学会弘前大会にて口頭研究発表(題目:「『造形遊び』の過程で子どもが目指す形とその典型に関する考察ー小学校教諭の省察に基づくアクション・リサーチを通してー」)を行い、公表した。また、その他に、2024年3月31日出版の大学美術教育学会誌『美術教育学研究』Vol.56に査読つき共著論文1編が掲載された。
上記の研究の目的は、図画工作科の「造形遊び」の過程で子どもが目指す形とその典型を、事例に即して明らかにすることであった。ここでは「形」を形成性のダイナミズムを含意する概念であり、同時に子どもの意志や行為と不可分一体のものであると捉えた。2022年度に弘前大学教育学部附属小学校で2年生、5年生、4年生の順でガイロープを用いた「造形遊び」の2コマ続きの授業を計画・実施した。2023年度には、授業を担当した3名の教諭と1名の研究者(申請者)による映像を用いた協同的な省察を行ない、会話データに対して、N-Vivo 14 を用いたコーディングによる質的分析を実施し、結果をカテゴリー等一覧とグラフィック・エスノグラフィーを通して記述した。本研究によって、従来から指摘されている合理的な美しさを目指す形のほかに、体性感覚による探索・踏破を目指す形や、公共的な場の構築を目指す形を典型として認めることができた。また、教師による省察は,彼らの実践知を通して名状し難い形を言語化し,その典型を特定する上で有効であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請時の予定では、2023年度には「表現の弁証法」に関する文献調査を通した理論的研究を行う予定であったが、その成果は実践的調査の成果に基づく論文の一部に含まれる形にとどまり、独立した論文として公表する段階には至らなかったため、「(3)やや遅れている」を選んだ。一方、実践的調査については2024年度以降に行う予定であったが、実際には2022年に他の研究課題(若手研究、19K14254)で収集した授業のデータが分析以前・未公開のまま手元に存在していたため、これに対する分析と考察を優先的に実施した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は上に述べた「表現の弁証法」に関する文献調査を通した理論的研究を継続的に行うほか、新たな「造形遊び」の授業題材を開発し、弘前大学教育学部附属小学校で実践する予定である。今後の実践を通して、2024年の大学美術教育学会誌の論文では特定されなかった形の典型についても、解明していくことが期待される。さらに、並行して「造形遊び」の目標に対する意識に関する、全国の中学校美術科担当教員を対象とした質問紙調査の準備を進めていく。
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