研究課題/領域番号 |
23K12769
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
小林 将太 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (50591468)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 道徳教育教材 / 青木孝頼 / 道徳の時間の特質 / 道徳的価値 / 計画的、発展的な指導 / 価値観の自覚 / 読み物 / 自我関与 / 教材分析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、道徳教育における教材論の再興に向けて、道徳の時間特設期に教科調査官等を務めた青木孝頼の指導理論の特質を、特に教材論に焦点を当てて解明することを中心的な目的とする。教材論が軽視され、教科化以前の資料の多くが変わらず使われる原因は、青木の指導理論が道徳科における質の高い指導方法に位置づき続けていることにあると考えられる。そこで、青木の指導理論の特質を教材論に着目して解明するとともに、その特質の今日的な適切性について検討する。加えて、これらの解明と検討から得られる教材論的視点に立って教科書教材を分析し、現状把握と改善方策の検討を行うことで、教材論再興に向けた研究基盤の構築を図る。
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研究実績の概要 |
2023年度は、育児休業取得に伴う補助事業期間延長後の研究実施計画に基づき、文献研究を通して青木孝頼の道徳の指導理論(以下、青木理論)の展開を教材論的視点から分析し、その特質を明らかにする作業を進めた。その成果は以下の通りである。 第一に、青木理論では道徳の時間の特質=限界が、学校における各指導の関係に係る道徳的行為の動因についての、および道徳的行為と道徳的価値の関係についての理解を土台にして、「一定の道徳的価値についての長期にわたる計画的、発展的な指導」や、「一定の道徳的価値についての長期にわたる計画的指導」と「子ども一人一人に自分の価値観を自覚させること」に見出されていたこと、および共感的な活用や価値の一般化がこうした道徳の時間の特質をふまえた理論化であることが確認された。 第二に、青木理論における教材は、教材ごとに単一の道徳的価値に焦点化され、提示される行為の道徳的善悪が子どもの道徳性ないし価値観からみても自明である読み物であること、そしてそれゆえ価値葛藤の把握には適さず、教訓的な押しつけや結論の安易な提示の回避が難しいことが明らかになった。 第三に、今日的視点から考察した結果、青木理論における教材は、「考え、議論する道徳」の前提である道徳的な課題に対する答えの複数性と整合的とは言えない、個人と社会の両方のウェルビーイングを追求する上で道徳的価値以外の諸価値への視点を提供できるとは限らない、および異質な他者との対話と共生に反するような必要以上の忖度を求めるコミュニケーションのあり方を無批判に提示しかねない、という3点から特徴づけられた。 以上の成果は、道徳教育教材論の再興に向けて、これからの道徳教育に適う教材のあり方の検討と具体的な教材開発のための基盤形成の必要性を理解する上でも、高い意義を有すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
育児休業取得に伴う補助事業期間延長後の研究実施計画に沿って研究を進められているため。
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今後の研究の推進方策 |
育児休業取得に伴う補助事業期間延長後の研究実施計画に示した通り、2023年度の成果の論文化を進めるとともに、2024年度の計画内容である青木の指導理論に基づく授業実践の実際について当時の授業記録の検証を通して考察する作業を進める。また、2025年度の計画内容に向けて、小学校道徳科教科書等を購入する。 なお、研究計画調書に「教材のあり方を問い直すには、個々の指導理論に着目して、そこで前提とされる教育の目標や内容、学習観や指導観などとの関連で教材がどのように規定されるのかを具体的に解明する地道な作業の蓄積が求められる」と記載したことに関連して、余裕があれば、青木の学習観や指導観の基盤にある自我関与概念に関して、青木と同時期に活躍した他の研究者・実践者による自我関与概念の使用についても解明を進めたい。
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