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教師が客観的に授業を自己評価するための自然言語処理による新しい発話分析法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 23K12785
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
研究機関岡山理科大学

研究代表者

保森 智彦  岡山理科大学, 教育学部, 准教授 (80847674)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
キーワードTransformer / 言語処理 / 発話分析 / 主体的・対話的で深い学び / 省察 / 教師 / 評価 / 授業
研究開始時の研究の概要

本研究は、小学校の算数の授業中の教師と児童の発話を記録し、それをAI による自然言語処理を用いて分析するものである。分析の観点は文部科学省が示した「主体的・対話的で深い学び」を実現する授業と、申請者がこれまで研究してきた教師の適応的熟達化に関する研究である。調査結果は教師にフィードバックされ自己評価してもらうとともに、次の授業改善に繋げるようにする。この調査を繰り返し行うことでAI による自然言語処理を用いた分析の精度を上げるとともに、多忙な教師でも能動的、かつ客観的に授業を自己評価できる新しいシステムの開発を目指す。

研究実績の概要

2023年度は予備調査として「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」と適応的熟達に関する発話分析を行った。具体的には、2023年7月と翌年2月に調査協力者である教師 1名に算数科授業を実施してもらい、発話分析を行った。教師にはクラス内でターゲット児童(学力の異なる6 名、以下:「児童」)を決めてもらって授業を行い、研究者がビデオカメラおよび録音端末で記録した。前述の児童にはチャットアプリをインストールした端末を1人1台ずつ配付し、学習が分からないと感じた場面でスタンプマークを表示してもらった。
研究者は授業のデータを持ち帰り、授業中の音声の文字起こしを行い、Transformer モデルを授業分析に拡張したモデルを用いて分析した。発話全体に対してベクトル化した分散表現に変換して「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」に関する発話を抽出した。また、適応的熟達の側面で発話分析し、児童がスタンプマークを押した場面と合わせて結果をまとめ、後日、教師にフィードバックし自己評価と省察をしてもらった。
成果の1点目は、Transformer モデルを授業分析に拡張したモデルを用いて分析した際、比較する授業が同一領域内であると抽出精度が高まるという知見を得たことである。同じ「C変化と関係」領域間の授業発話を比較すると50%以上の精度で「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」に関する発話が抽出された。2点目は、適応的熟達の視点から分析した結果と、ターゲット児童のスタンプマークをもとにした授業記録を調査協力者にフィードバックしたことで、調査協力者自身の自発的な省察を促すことができ、2回目の授業では自律的な学習者の育成に向けた発話が増加し、授業に変容が見られたことである。2023年度の研究結果の一部は、岡山理科大学紀要第59号Bにおいて公開している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題の進捗状況は概ね良好である。当初の計画では研究期間の3年のうち、初年度は調査方法および分析方法の検討や調査協力校の決定を行うこと等を計画していたが、初年度に調査協力校を1校決定でき、1名の現職教師の協力を得ることができた。そのため2回分の授業データを収集することができた。このyに研究課題が概ね円滑に遂行できたことから、一定の知見を得ることができた。また、調査協力校の校長から次年度の調査協力者を2名に増やすことについて了承を得た。
課題としては当初予算が間接経費として23%削減されたため、授業中の映像や音声の録音機材の数や品質を低下させざるを得なかった点がある。このことで、教師や児童の音声が適切に録音できない部分が発生し、正確な文字起こしのデータが収集できなかった。また、経費節約のため、授業中の音声の文字起こしを研究者が手作業で行った。そのため、Transformer モデルを授業分析に拡張したモデルを用いた分析までの文字起こし過程に手間と時間がかかった。また、調査協力者のクラス内でターゲット児童を決め、無料チャットアプリをインストールした端末をターゲット児童に1人1台ずつ配付してスタンプマークを表示してもらったが、調査協力校のネットワークセキュリティー上の関係で調査協力校のWIFI環境に接続することができなかった。そのため、今後は校内のWIFI環境に依存しない機器やツールの準備が必要である。
今後は、できれば授業中の音声をリアルタイムで録音し文字起こしする端末とツールを準備し、Transformer モデルを授業分析に拡張したモデルを用いた分析までの過程を自動化することによって、分析までの時間を短縮することが課題である。また、校内のWIFI環境に依存しない端末やチャットアプリなどのツールを用いて児童の学習状況を的確に把握することが課題である。

今後の研究の推進方策

本研究計画に大きな変更点はない。今年度は、調査協力校1校の教諭2名に対して協力してもらい、1人当たり年2回の授業を行い、授業を記録する予定である。その際の課題は、授業中の音声をリアルタイムで録音し、より正確に文字起こしするツールを準備することであり、文字起こしまでの過程を時間短縮することである。そのため、昨年度は教師と児童の音声を同時に録音したデータを分析対象としていたが、今年度は教師の発話に重点を置き、まず教師の音声を正確にリアルタイムで文字起こしできるように試みる。
さらに、昨年度は持ち帰ったデータを文字起こしし、その後、Transformer モデルを授業分析に拡張したモデルを用いて分析し、発話全体に対してベクトル化した分散表現に変換して「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」に関する発話を抽出したが、今年度はこの過程を授業後すぐに行うための方法も検討したい。すでに収集している既存のラベリングした発話データを用い、当日録音した発話からの「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」の発話を抽出できるよう試みる。
また、実施する授業は、できれば昨年度と同じ領域(C「変化と関係」)で授業を行ってもらい、昨年度のデータを用いてAIによる言語処理技術を活用した「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」に関する発話を抽出することも今年度の課題である。
適応的熟達に関する発話分析に関しては、前述の発話分析の進捗状況に応じて、授業中の発話にラベリングを行い、前述と同じ手法で分析および抽出を試みる。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (3件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] AI を用いた「小数のわり算」の授業中の発話の言語抽出に関する一考察 : 「主体的・対話的で深い学び」の発話に着目して2023

    • 著者名/発表者名
      保森智彦
    • 雑誌名

      岡山理科大学紀要. B, 人文・社会科学,

      巻: 59 ページ: 101-112

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [学会発表] 大規模言語モデルによる授業改善に向けた小学校における授業の発話シミュレーション2024

    • 著者名/発表者名
      大西朔永, 児嶋祥成, 椎名広光,保森智彦
    • 学会等名
      言語処理学会第30回年次大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Classroom Utterance Analysis Using a Generative Deep Neural Networks for Dialogue Model2023

    • 著者名/発表者名
      Sakuei Onishi, Tomohiko Yasumori, Hiromitsu Shiina
    • 学会等名
      IIAI International Conference on Advanced Applied Informatics 2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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