研究課題/領域番号 |
23K12789
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
|
研究機関 | 国際学院埼玉短期大学 |
研究代表者 |
伊東 一誉 国際学院埼玉短期大学, 幼児保育学科, 講師(移行) (00899693)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | つまずき / 自己調整 / 描画熟達者モデル / 苦手意識 / 描画プロセス / 描画 / 教材開発 / 美術教育指導 / 表現 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、描画プロセスに生じるつまずき要因や段階を解明し、芸術教育にかかわる保育者や教員の指導に貢献する教材を開発することを目的とする。 表現力は、思考力・判断力に並んで学びに向かう力の礎に位置づけられる。描画活動(見る・描く・鑑賞する)には姿勢の保持や手指の巧緻性、バランス感覚といった身体機能・脳機能の発達が前提であるほか、感性の育成等、表現力を育む基礎的要素が凝縮されている。しかし幼児期・学齢期における描画のつまずき経験率は非常に高く、長期的な学習意欲の減退につながることが分かっている一方、有効な方策は認められていない。本研究から創造的人材の育成、表現活動の開拓と発信を支えることを目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究では、学校現場における子どもの表現力の育成と向上を目指し、絵を描くことをはじめとする芸術分野の指導に不安を覚える教員などを対象とした視覚メディア教材の開発を目的としている。特に描画(見る、描く、鑑賞する)行為の意義やプロセスを見直し、表現としての描画につまずきを覚える要因を明らかにし、効果的な介入方法を提案する。本研究を通して、子どもにとっての描画の意義(手先の巧緻性の発達、空間認知力や観察力の育成、表現力の基礎の育成)が実証的に見直され、教育現場に広く生かされることを目標としている。 本研究における初年度(第1期)は、「描画特有の身体運動や描画者の意識を明らかにし、そのプロセスで生じるつまずきの要因を抽出して構造化すること」を目的とした。そこで、特に空間的なモノの見方の習得に着目し、主に2つの場面(①描画熟達者のデッサンプロセス、②小・中学生の描画プロセス)に対する観察と質問紙調査を計画し、結果的に3つの調査(③非熟達者のデッサンプロセスを加えた)を実施した。 ①からは、特に描画中の「見る」行為に着目することで、新たに「調整活動」という視点が生まれ、熟達者が描画の模倣と表現の段階に特につまずきを感じていることや、困難場面で見方を変容させながらつまずきを克服したり調整したりしていることが明らかになった。この分析結果については、研究論文として整理し発表した(「描画者の『見る』行為に着目した能動的な調整活動-美術系学生のデッサン観察の時間見本法による分析-」大学美術教育学会「美術教育学研究」第56号)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題に対し、第1期となる令和5年度は「子どもの描画プロセスに生起するつまずきの構造化」を試みた。 描画プロセスの観察は、第一に描画熟達者、第二に小・中学生を対象とする場合を計画しており、概ね当初の計画通りに実施した。また、描画熟達者の描画プロセスの分析過程で、非熟達者との比較によって分析の精度を高める必要があると考えられ、同様の条件による非熟達者を対象とした観察調査を加えた。これによって、描画熟達者の描画プロセスの特徴が顕著に示され、描画モデルの信頼性を高めることにつながった。 一方で、中学生を対象とした観察と質問紙調査からいくつかのつまずき要因が抽出され、描画環境に対する自己調整機能にアプローチすることが、効果的な介入方法に繋がる可能性が示唆された。しかし、一度目の観察調査からは生徒の身体的なつまずきのほか、他者意識、授業環境、教員との関わり、授業時間や描画課題など、いくつかのつまずきが複合的に示されたものの、構造化には至らなかった。また、小学生を対象とした調査についても実施に至らなかったため、改めて観察方法と視点を見直しながら、小・中学生の描画プロセスの観察調査を実施する必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
第2期となる令和6年度は、「描画プロセスのつまずきに対する介入策の効果検証」を計画している。 第一に、小・中学生を対象とした描画プロセスの各課題を明らかにし、引き続きつまずき要因の構造化を試みる必要がある。第1期に実施した観察と質問紙調査では、①様々な学校現場での汎用性、②生徒が個別にもつつまずき要因、といった課題の複雑性を考慮して、「自己調整」をキーワードとした観察の視点が新たに見出された。この結果と課題について整理し、また当初の計画とは異なる観察条件と方法によって、再度調査を実施する。 第二に、つまずきに対する個別の介入方法を検討し、描画行為に対して課題を持つ児童・生徒に対する介入を段階的に実施していく。介入対象は、描画に対して苦手意識を抱く小学生、中学生であり、描画プロセスの観察と質問紙による調査を行う。
|