研究課題/領域番号 |
23K12887
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分10020:教育心理学関連
|
研究機関 | 人間環境大学 |
研究代表者 |
嘉瀬 貴祥 人間環境大学, 総合心理学部, 講師 (40804761)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | Sense of Coherence / ライフスキル / 心理教育プログラム / 初年次教育 / 高大接続 |
研究開始時の研究の概要 |
大学における初年次教育は,学校適応やメンタルヘルスに問題が生じやすい高校からの環境移行を円滑化し,充実した学士過程を実現する基盤を整える重要な機会である。申請者の研究から,大学生のメンタルヘルスの保持増進には,ライフスキル(LS)とSOCが重要な役割を果たしており,これらを同時に高めることで社会的適応が促進されることが示唆された。そこで本研究では,初年次教育として展開可能な心理教育プログラムの開発を最終的な目的として,高校から大学への環境移行に伴う大学生のLSとSOCの縦断的変化の解明,心理教育プログラムと初年次教育に関する知見の整理,LS向上がSOC強化につながる過程の検証を進める。
|
研究実績の概要 |
本研究課題では,初年次教育として展開可能な心理教育プログラムの開発を最終的な目的として,高校から大学への環境移行に伴う大学生のライフスキルとSense of Coherence(SOC)の縦断的変化の解明,心理教育プログラムと初年次教育に関する知見の整理,ライフスキルの向上がSOCの強化につながる過程の検証を進めることを目的としている。この目的に沿い,以下の4件の研究を段階的に(部分的に並行して)進める計画を立てている。まず研究1として,大学生のライフスキルとSOCの縦断的変化の解明を行う。次に研究2として心理教育プログラムと初年次教育に関する知見の整理を進める。さらに,研究3としてライフスキルの向上を目的とした実施される心理教育であるライフスキルトレーニングプログラムによってSOCが強化される心理的過程の解明を行い,最後に研究1~3までに得られた研究知見に基づいたプログラムの開発と効果検証を行う。以上が,本研究課題の研究期間である4年間(2023年度~2026年度)を通じて取り組む内容となる。 今回の報告対象である2023年度は研究1および研究2の目的に沿い,主に大学生のライフスキルとSOCに関する調査と,心理教育プログラムや初年次教育に関する研究知見の収集を行った。研究1においては想定されていない課題が生じたものの,年度内にこれを解決し,さらには2024年度以降の研究に活用することのできる知見を見出すことができた。また研究2については,研究代表者が本研究課題とは別に取り組んでいた研究や調査の成果も取り入れることで,当初の計画以上の成果が得られたと考えられる。これらの成果は学術論文,または事例報告として,学術雑誌に投稿中である。実績や課題の詳細については「現在までの進捗状況」と「今後の進捗状況」の項に記載する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上述のように2023年度には,研究1および研究2を中心に取り組んだ。研究1に関連して予備調査を行ったところ,SOCを測定するために用いた29項目7件法版SOCスケールにおいて信頼性および妥当性に関する問題が認められた。当該の尺度はSOCの測定に広く用いられているものであるが,本研究のように縦断的にSOCを測定しその経時的変化を追うためには,これらの問題を解決する必要があると考えられた。そこで,ライフスキルとSOCの縦断調査を開始する前に,SOCの測定に関する問題を優先して解決することとした。この目的に沿い,数回のウェブ調査から得たデータを項目反応理論等の分析を用いて分析し,尺度における問題点と解決策を検討した。この調査研究の結果から,縦断調査で使用するに耐え得る尺度の運用方法を導出することができた。 研究2における心理教育プログラムに関連する知見の整理に関しては,大学における初年次教育に関する文献を中心に収集し,その現状や課題について整理を進めたほか,小学生や中学生向けの健康教育プログラムについても調査を行い,特に本邦における義務教育課程における心理教育プログラムの導入の現状や,各都道府県,市区町村の教育委員会による取り組みについて情報を収集した。 以上のように,研究1については問題が生じたもののこれを解決することができ,2024年度からは計画に沿って研究課題を進めるための準備が整った。また研究2については,初年次教育について横断的な知見のみでなく,義務教育を経た先に経験する高等教育の入口という縦断的な観点から知見の整理を十分に行うことができたと考えられる。これらのことから2023年度には,研究課題全体,あるいは2024年度に実施する研究へ向けて非常に有意義な成果を上げることができたことから,その進捗は計画以上のものであったと判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度には,2023年度に得られた研究知見に基づき健康教育プログラムの作成を進める。具体的には,①高SOC者のストレスマネジメントの特徴に基づいたストレスマネジメントのチェックシートの作成,②関連する既存のプログラム(e.g., ライフスキル・トレーニング,ストレスマネジメント,認知行動療法)内容の集約と整理,③プログラムの実施形態と内容(各回の目標)の検討,④関連する量的研究を実施する。 ①から③については,島本好平氏(法政大学),上野雄己氏(東京大学)ら関連領域の研究者とも連携して進めていく。主に研究代表者が集約した情報を研究者間に共有しそれぞれから意見を募る形式をとるが,必要に応じてオンラインミーティングを開催し全員で協議することとする。共同研究者にはこのような形で研究を行うことに同意を得ており,今後の研究を推進するうえで必要となる研究体制も確保できている。研究代表者は関連文献の収集と整理を行いながら,教員向けに実施されるプログラムの講習会や研究者向けのセミナーなどに参加しプログラムの実施可能性について情報収集を行う。 また④については,2023年度に得られた知見に基づいてSOCスケールの改良を進め,2025年度以降の尺度運用に向けた最終的な準備を行う。信頼性については,内的一貫性や再検査信頼性のほか,項目反応理論を用いた質問項目と選択肢の機能についての検証も行う。また妥当性については,基準関連妥当性の他,増分的妥当性や弁別的妥当性の観点から,SOCスケールやSOCそのものに関する研究課題の解決を図り,2025年度以降に行う大学生におけるSOCの縦断調査につなげることとする。 以上のように,2024年度には2023年度に得られた.特に研究上の課題解決から得られた知見を活用しながら,本研究課題における目標を達成するために必要な成果を上げていく計画である。
|