研究課題/領域番号 |
23K12932
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤本 花音 京都大学, 文学研究科, 助教 (40964218)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 空間定位 / 主観的視覚垂直 / fMRI / 広視野呈示 / 主観的垂直 / バーチャルリアリティ / 空間認識 / MRI |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、人間の垂直知覚を支える神経基盤を、広視野映像呈示装置と機能的磁気共鳴画像法 (fMRI)を組み合わせた独自の脳活動計測手法を用いて明らかにする。任意の傾きの視覚的背景を広視野呈示して垂直知覚を効果的に操作することで、視覚的・身体的な垂直知覚を表現する神経活動を特定する。本研究成果は、社会の高齢化に伴い増加する垂直知覚の疾患に関する基礎的知見となることが期待される。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、人間の垂直知覚を支えるモダリティ統合過程の神経表象を特定することであった。空間の傾きの判断には基準となる「垂直」の知覚が必要不可欠であり、人間は複数の感覚情報 (モダリティ)を用いて垂直方向を推定している。垂直知覚のモダリティ統合メカニズムが、行動実験に基づく計算モデルとして構築されてきた一方で、こうしたモデルが神経活動としてどのように表現されているかは不明であった。本研究では、任意の傾きの視覚的背景 (「視覚参照枠」)を広視野呈示することで垂直知覚を効果的に操作可能な独自のfMRI脳活動計測パラダイムにより、視覚的・身体的な垂直知覚の神経表象および表象間の結合を明らかにする。 本年度は、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、視覚参照枠によって変化する主観的垂直の神経表現を検討した。MRI用広視野呈示装置を用いて、正方形のフレームを時計回り・反時計回り・正立方向のいずれかの向きで広視野に呈示した。fMRI撮像中、参加者はフレームの中央に呈示された直線のロッドを注視する課題を行った。ロッド及びフレームの向きに対する脳活動の順応を推定したところ、ロッドの向きに対しては有意な順応が見られなかった一方で、フレームの向きに対しては、自己運動感覚や視覚運動協応などに関与すると思われる複数の脳領野でBOLD信号の減衰が見られた。これらの結果は、フレームの傾きにおける主観的垂直の変化に対する知覚・運動処理過程を反映している可能性が考えられる。本研究成果は、行動的知見と神経科学的知見の接続を促進するだけでなく、社会の高齢化に伴い増加する垂直知覚の疾患に関する基礎的知見となることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脳情報通信融合研究センター(Center for Information and Neural Networks(CiNet))における脳活動データの収集が完了し、学会発表や論文投稿の準備を行っている。データ分析に予想外に時間がかかり、今年度は進捗が滞り気味であった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の実験では、ロッドの傾きへの順応を示す脳領野は特定されなかった。脳活動測定と併せて行った心理物理学実験の結果から、広視野呈示によって頑健な錯視が生じることが確認された。一方で、その錯視量は平均2°程度であり、神経活動の違いを検出するには錯視が依然として小さかった可能性がある。今後の研究では、より強度の大きいフレームを用いて錯視を増大させることで、ロッドへの順応を示す領野を特定する。これらの研究から得た知見は国内外の学術大会で報告し、発表時の議論を踏まえた上で学術論文を執筆し、国際学術誌に投稿することを予定している。
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