研究課題/領域番号 |
23K12938
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
伊藤 優樹 同志社大学, 研究開発推進機構, 助教 (70962017)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 感覚統合 / 視覚 / 聴覚 / 自閉症モデル動物 |
研究開始時の研究の概要 |
感覚統合は外界の環境を把握や円滑なコミュニケーションに重要な役割を果たす。しかしながら自閉スペクトラム症(ASD)者の感覚統合は非定型であることが知られている。本研究は感覚統合の中でも視聴覚に対してマウスとヒトを対象に調査し、感覚統合の神経基盤と障害を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、複数の感覚情報を統合する能力が非定型である自閉スペクトラム症(ASD)との比較しつつ、感覚統合のメカニズムとその障害を明らかにすることである。ASDには遺伝的要因と環境要因の両方が関与しており、対応するモデルマウスも多数作成されている。一方感覚統合に障害を示すマウスはほとんど明らかになってため複数もモデルマウスを使用して比較していく。 マウスを対象とした研究では、今年度の4月末に2種類の遺伝子改変ASDモデルマウスを受け入れた。その後半年ほどかけて繁殖させ、安定して個体数を維持することができるようになった。またバルプロ酸暴露妊娠マウスの出生仔マウスはASDモデルとして周知されている。この環境要因によるASDモデルマウスで社会性テストを行ったところ、新奇マウスへの接近行動が減少し、社会性の低下を示した。現在は、2種類の遺伝子改変ASDモデルマウスで同様の社会性テストを行っている。また、定型発達マウスに対して、感覚統合を評価するための刺激検出課題を頭部固定オペラント条件付けで行った。視覚単独刺激・聴覚単独刺激よりも視聴覚同時刺激を提示した方が刺激への反応率が高かった。さらに反応時間も短くなった。これらの結果は、感覚統合により行動性能が向上していることを示唆している。 ヒトを対象とした研究では、ダブルフラッシュ錯覚をモデルとして錯覚を引き起こす刺激条件の検討を行った。ダブルフラッシュ錯覚はげっ歯類においても生じることが示唆された(Ito et al., 2019)ことから、将来的にげっ歯類で詳細な検討を行うために用いられた。2回目の聴覚刺激の音圧を下げると2つの音を知覚する割合が低下し、錯覚も起きにくくなった。これは聴覚刺激の主観的な知覚が視知覚を変化させることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
導入した2種類の遺伝子改変マウスが安定して繁殖ができるようになったこと、バルプロ酸暴露実験も最近になり安定して出産仔が成長するようになったことで、今後予定している実験にも十分な数の個体を確保できる。また、ASDの特徴である不安の亢進と社会的コミュニケーション障害を調査するための実験系も確立し、すでに定型発達マウスに対して実験を行うことができた。加えて、感覚統合を評価するための刺激検出課題も確立できた。さらにヒトを対象とした研究では、音圧差の影響によりダブルフラッシュ錯覚の生起頻度に影響を与えることを明らかにした。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度作成したセットアップを用いて、遺伝・環境要因による複数のASDモデルマウスの「不安」と「社会性」そして「感覚統合」を調べる。これによりこれら3つの関係性を調査する。一方、感覚統合の評価にはオペラント条件づけを用いるため実験が完了するまでに時間がかかる。そのためもっと簡易的に調べることができる行動実験の開発を進める予定である。 また、ヒトを対象とした研究では聴覚刺激のパラメータに注目して錯覚が生じる条件を引き続き検討していく。さらにこれまでに行ってきた実験とASDとの関係性を調べるため、ASDの特性を評価するためにAQ(自閉症スペクトラム指数)の導入を進める。
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