研究課題/領域番号 |
23K12955
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分11010:代数学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤田 遼 京都大学, 数理解析研究所, 助教 (40972477)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | アフィン量子群 / 量子Grothendieck環 / モノイダル型Jantzenフィルトレーション / 箙ヘッケ環 / R行列 / ポテンシャル付箙 / 団代数の圏化 / 箙多様体 / Kirillov-Reshetikhin加群 |
研究開始時の研究の概要 |
アフィン量子群は理論物理における可解格子模型の背後にある対称性として導入され、複素単純リー代数の量子アフィン化を与える重要な研究対象である。そのADE型基本表現については中島箙多様体を用いて表現及びテンソル積を構成する手法が確立しているが、BCFG型基本表現を含むより一般の表現に対してはそのような手法がまだ十分に発達しておらず、未解決問題がより多く残されている。本研究では、団代数の加法的圏化を担うポテンシャル付箙の表現論と団代数の乗法的圏化を担うアフィン量子群の表現論との間の直接的関係を追究することにより、ADE型基本表現を超えたより一般の表現とそのテンソル積を構成する新たな手法の構築を行う。
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研究実績の概要 |
本研究課題の主対象であるテンソル積表現の構造と密接に関係する研究のひとつとして、D. Hernandez氏と共同でアフィン量子群の有限次元表現のなすモノイダル圏のGrothendieck環の量子化(以下、量子Grothendieck環)に関する研究を行った。これは前年度からの研究の継続である。今年度は主に証明細部の点検と論文の執筆を行った。この研究では、基本表現の任意のテンソル積にR行列を用いてフィルトレーション(モノイダル型Jantzenフィルトレーション)を導入することで通常のGrothendieck環の一径数変形を定義し、それが既存の代数的に定義される量子Grothendieck環と一致することを予想として定式化した。そして実際に少なくともADE型アフィン量子群の場合には、中島箙多様体を用いた幾何学的解釈との比較を通じて予想が正しいことを証明した。加えて対称型箙Hecke環の表現についても類似の予想を定式化し、同様に幾何学的解釈が存在する場合について予想を証明した。これまでに量子Grothendieck環には複数の定義あるいは解釈が知られているが、それらの表現論的な意味は不明瞭であった。本共同研究は、R行列を用いて表現のテンソル積の非可換性を反映した量子Grothendieck環の表現論的新解釈を与えようとする試みであり、いくつかの重要な場合に実際それがうまく行くことを示したものである。 一方、この共同研究で用いた手法の一部をやや異なる状況で適用することにより、レベル1部分圏と呼ばれるADE型アフィン量子群の特別な表現のクラスに関しては、基本表現に限らず一般の既約表現の間のR行列を解析できることが分かった。これによりR行列の特異性が対応する(自明なポテンシャル付)箙の表現の間の数値的不変量に一致することが期待される。これについては今後さらに考察を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
モノイダル型Jantzenフィルトレーションに関するHernandez氏との共同研究は、前年度から継続して行った研究ということもあり、本年度はじめの段階で既に構想の大部分が完成していたのだが、証明の細部を検討する段階で見落としていたいくつかの技術的困難が明らかになり、それらのギャップを埋めるのに想定を大幅に上回る時間を費やしてしまった。一方、この共同研究で用いた手法を別の状況で適用することで今まで理解されてこなかったより一般の既約表現の間のR行列の特異性を調べるための糸口を掴むことができ、これは本研究課題の主目的であるアフィン量子群の表現論とポテンシャル付箙の表現論との関係性のより深い理解につながると期待される。そのため全体として当初の予定より遅れてはいるものの、来年度以降でこの遅れは挽回可能と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
上述のとおり、まずはレベル1部分圏におけるR行列の特異性と(自明ポテンシャル付き)箙の表現の数値的不変量の間の関係を明らかにし、その結果を踏まえてポテンシャルが非自明な場合へのさらなる一般化を検討する。一方、本研究課題で目標のひとつとしているポテンシャル付箙を用いたアフィン量子群の表現の構成に関しては、ごく最近外部の競合する研究者らによる研究の進展が相次いでいる。そうした進展にも十分に注意を払い、最新の研究成果を取り入れながら研究を進める。
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