研究課題/領域番号 |
23K12980
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
佐々木 優 宇都宮大学, 共同教育学部, 助教 (50909695)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2025年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 対称空間 / 四元数ケーラー多様体 / 対蹠集合 / 例外型コンパクトリー群 |
研究開始時の研究の概要 |
2次元球面の北極・南極の2点の位置関係を,コンパクト対称空間へ拡張した概念として対蹠集合が存在する.対蹠集合はコンパクト対称空間の微分幾何的な側面から定義される一方,トポロジーや調和解析など,対称空間上の様々な数理と関係を持つことが指摘されており,現在盛んに研究がなされている.しかしながら,全てのコンパクト対称空間において極大対蹠集合の分類・構成が完成しているわけではない.本研究では極大対蹠集合の分類・構成が完成していない対称空間として例外型コンパクトLie群E7やE8によるコンパクト対称空間を取り上げ,極大対蹠集合の分類・構成の完成を目指す.
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研究実績の概要 |
本年度は,コンパクト四元数対称空間の部分多様体論の研究に取り組んだ.まず,コンパクト四元数対称空間におけるイソトロピー群作用の各軌道が,四元数ケーラー構造についてどのような性質を持つのかを調べた.その結果,全複素軌道・四元数軌道のほか,全複素軌道のアナロジーである全CR軌道が存在することが分かった.とくに全CR軌道は,四元数構造への切断の様子で2種類に分けられ,ハイパーケーラー多様体のように切断が2次元球面の濃度の数だけ存在し,それぞれの切断がCR部分多様体の構造を与えている軌道も存在することがわかった.また,四元数軌道のアナロジーであるような軌道の存在も確認できた.さらに,軌道の配置の様子も調べたところ,全複素軌道を取り巻くように全CR軌道が存在し,全複素軌道から離れたところに四元数軌道が現れることも分かった.本研究の結果はすでに論文にまとめ,査読付き国際雑誌に受理されている. また,コンパクト四元数対称空間において余等質性1の群作用をもつ全複素部分多様体の構成にも取り組んだ.イソトロピー群の適切な部分群によるヘルガソン球面の軌道を調べたところ,コンパクト型エルミート対称空間の正則直線束となることがわかった.とくに,この軌道が全複素部分多様体となることがわかり,余等質性1の群作用を持つコンパクトではない全複素部分多様体を構成することができた.また,いくつかの場合においてはこれらの軌道は1点コンパクトすることができるが,コンパクト化するとその1点では微分構造が失われ特異点となることもわかった.本研究の結果もすでに論文にまとめてあり,現在査読付き国際雑誌へ投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
例外型対称空間の対蹠集合を,全測地的部分多様体ならびに各対称空間の具体的な実現の両側面から調べるというのが本研究の目的であった.今年度は,全測地的部分多様体に焦点を絞って研究を進めることができ,とくに四元数ケーラー構造を持つ例外型対称空間のイソトロピー群作用による部分多様体の性質を詳しく調べることができた.また,余等質性1であるような群作用を持つ部分多様体の研究も進めることができたため,本研究は順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き,来年度も対称空間の対蹠集合を部分多様体論に着目して調べていきたい.また,本年度に四元数対称空間のイソトロピー群作用を調べていたところ,CR部分多様体の例を多く構成することができた.これらの例はエルミート対称空間においても構成することが期待できる.そこで,エルミート対称空間の場合にこれらのCR部分多様体の全実分布による葉層構造を詳しく調べていきたい.とくに,各葉がどのような部分多様体となるのかを調べ,さらに葉層構造とエルミート対称空間の点対称構造との関係性を解き明かしたい.
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