研究課題/領域番号 |
23K12985
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
永井 康史 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 講師 (70910660)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | tiling / spectrum / quasicrystal / diffraction spectrum / dynamical spectrum |
研究開始時の研究の概要 |
「タイル張り」について研究する。タイル張りは幾何学的な対象だが、代数や解析などの数学の他の分野や、準結晶の研究などの物理と関係が深い。物理的には、タイル張りに付随して定まる「スペクトル」の性質が重要になる。本研究ではタイル張りのスペクトルの性質を明らかにする。これはタイル張りの一部分の情報から、他の部分の情報がどの程度分かるのかという問題を答えることにつながる。
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研究実績の概要 |
本研究ではタイル張りや語と呼ばれる対象のスペクトルの研究を行っている。特にいつそれらが純点スペクトルとなるのか、それらがルベーグ測度に関していつ特異になるのかという問題を研究している。純点スペクトルならばルベーグ測度に関して特異であるが、一般のタイル張りに対してこれらの性質を示すのは難しく、これに関するPisot予想が主要な未解決問題となっている。 S進タイル張りは、先行研究で扱われていた多くのタイル張りを含む広いタイル張りのクラスであり、自己アフィンタイル張りのクラスを含む。後者のクラスは先行研究で盛んに研究されており、特にSolomyakによるoverlapアルゴリズムが重要な道具となっている。当初の予定では、別の「繰り込み」という道具をS進タイル張りのクラスに適用できるよう拡張し、それによりスペクトルの特異性を示そうとしていたが、本研究では上記のoverlapアルゴリズムをS進タイル張りに拡張することに成功し、それによりS進タイル張りが純点スペクトルを持つための十分条件を得た。 タイル張りがブロックからなる場合など、いくつかの特別な場合にこの条件を適用できることも証明し、多くのS進タイル張りが純点スペクトルを持つことを証明した。また上記のPisot予想の特別な場合はすでに証明されているが、その拡張を証明することに成功した。 このスペクトルの決定の問題はエルゴード理論的・調和解析的・数理物理的に重要な問題である。この問題の解決について一定の進捗を得たと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度には学期中に単独で研究を行い、学期終了後の夏と春に共同研究者を訪問して議論を行ったことで、概ね順調に研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も今までと同様に研究を進める。共同研究者との議論を行うとともに、その他の専門家を訪問したり、研究集会に参加することで議論を行い、研究を深める。すでに9月にフランスで開かれる研究集会への参加が決まっている。 本研究で開発したoverlapアルゴリズムの技法及び繰り込みの技術を用いて、より多くのS進タイル張りのスペクトルの決定を行う。まずoverlapアルゴリズムがより多くのS進タイル張りに適用できることを示し、これらのタイル張りが純点スペクトルを持つことを示す。また繰り込みの技術を用いることで、タイル張りに対する「力学系スペクトル」と「回折スペクトル」の関係を明らかにする。
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