研究課題/領域番号 |
23K12987
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
星野 壮登 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (20823206)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2026年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 確率偏微分方程式 / 繰り込み / 正則性構造理論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,繰り込みを伴う確率偏微分方程式(SPDE)を扱う.Hairerが導入した正則性構造理論は,多くのSPDEを扱える強力なものだが,現在の理論では扱えていない問題も多く,そうした場面では未だ,特殊なSPDEに限った研究が行われている.本研究の目的は,偏微分方程式や確率論における従来の手法が現在の正則性構造理論と相容れない点を解消していくことで,より多くのSPDEに適用可能な一般論を構築すること,及びその解の確率論的性質を解明することである.
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研究実績の概要 |
繰り込みを伴う確率偏微分方程式を扱う一般論として,正則性構造理論がある.本研究課題では,この理論の根幹をなす数学をより深め,さらに適用範囲を拡張させる研究を行っている. (1) 正則性構造理論における「再構成定理」や「多層Schauder評価」などの実解析的な定理について,別アプローチでの証明方法を模索した.Besovノルムの同値な定義として,熱半群のような作用素半群を用いるものがあるが,本研究ではその考え方を用い,適当な評価を満たす作用素半群による再構成定理や多層Schauder評価の別証明を与えた.この証明は,Ismael Bailleul氏 (Universite de Bretagne Occidentale)や楠岡誠一郎氏(京都大学)と共同で行なった,準線形確率偏微分方程式の研究で用いられた考え方を精密化したものである. (2) 非線形確率偏微分方程式の解を制御するためには,ノイズを含むいくつかのノイズ超汎関数の収束を示す必要がある.従来は,各々の超汎関数を「Feynman図」と呼ばれるグラフと対応させるグラフ理論的な手法が用いられ,基本的には一つ一つ手計算で解析しなければならなかった.そこで本研究では,ノイズが満たすPoincare不等式に基づく帰納的な証明を行った.この証明においては,一般のpに対するB_{p,∞}型のBesovノルムを考える必要が生じるが,従来の正則性構造はp=∞の場合のみに対応した代数構造であり,一般のBesovノルムが現れる場面を十分に考察することができなかった.本研究では,このような一般のBesovノルムに対応した「正則性可積分性構造」という新たな代数構造を考案し,帰納的な証明を完成させることに成功した.(Ismael Bailleul氏との共同研究)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ノイズ超汎関数の収束に関しては,「正則性可積分性構造」という新たな構造の導入によって,先行研究よりはるかに簡単な証明を得ることができた.これは当初の想定を超えた大きな成果であった.
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今後の研究の推進方策 |
ノイズ超汎関数の収束について今回得られた証明では,方程式の主要部が定数係数の微分作用素であるという性質を用いている.まずはこの弱点を克服し,変数係数の微分作用素に拡張することが当面の目標である. また今回導入した「正則性可積分性構造」は,Besovノルムに対応した正則性構造の自然な拡張であり,より多くの問題に応用できるのではないかと期待している.例えばStrichartz評価のような,可積分性の指数が重要な役割を果たす場面での応用を模索していきたい.
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