研究課題/領域番号 |
23K12988
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
田口 大 関西大学, システム理工学部, 准教授 (70804657)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2027年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | Bessel過程 / Radial Dunkl過程 / Dyson Brownian motion / Euler--Maruyama近似 / Bessel 過程 / Radial Dunkl 過程 / Cox-Ingersoll-Ross 過程 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、Bessel 過程の一般化である確率過程に対する数値解析手法を構築する。特に、Radial Dunkl 過程と呼ばれるDunkl Laplacian・ルート系を用いて多次元に一般化されたWeyl chamber上に値を取るマルコフ過程を取り扱う。この確率過程に対して、数値解析手法の構築・その精密な誤差評価を行う。具体的にはImplicit/Tamed Euler-Maruyama近似と呼ばれる手法を用いた数値解析を行う。
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研究実績の概要 |
本研究の目的はBessel過程の一般化とその数値解析である。2023年度は以下の4点についての研究成果を得ている:①radial Dunkl processの離散近似の導入とその誤差評価②Non-colliding squared Bessel particle systemの離散近似の導入とその誤差評価③非滑らかな係数をもつ確率微分方程式の解の密度関数の正則性について④係数が多項式増大である確率微分方程式の解の密度関数の正則性について ①についてはHoang-Long Ngo氏 (Hanoi National University of Education)との共同研究である。本研究においては測度変換の手法を適用するとこでradial Dunkl processについての負のモーメント評価を導出した。またその応用としていくつかの離散近似手法に関する誤差評価を与えた。本研究の結果は学術雑誌に投稿済みである。 ②についてはHoang-Long Ngo氏およびその学生のMinh Thang Do氏との共同研究である。本研究においては独立なブラウン運動を新しく準備しそれを用いた新たな測度変換手法を導出することによって、負のモーメント評価を導出した。①と同様いくつかの離散近似手法を導出し、その誤差評価を与えた。本研究結果は投稿準備中である。 ③については係数が有界変動である場合において、多次元の確率微分方程式の解の密度関数のBesov 正則性について研究した。特に滑らかさの指数が1より大きいことを示した。本研究結果は投稿準備中である。 ④については守時良氏(岡山大学)との共同研究である。係数が多項式増大である場合において、多次元の確率微分方程式の解の密度関数のBesov 正則性について研究した。また数値解析に応用できるということについても研究を行っている。本研究結果は投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Bessel過程の多次元化でもある非衝突確率過程およびradial Dunkl processに関する研究については、具体的にはSemi-implicit Euler-Maruyama近似を導入しその強収束の精密な誤差評価を得ることができている。しかし、この手法では実装が困難であるという問題があるため、truncated Euler-Maruyama近似を導入することで、その問題を解決している。 多次元の確率微分方程式の解の密度関数のBesov正則性に関する研究については、Romito氏によって導入されたone-step Euler-Maruyama近似を用いた方法を改良して研究した。ドリフト係数が有界変動である場合については、Avikainenの不等式を適用することで、正則性を改良した。具体的にはこれまで1よりも小さい正則性しかわかっていなかったものを1よりも真に大きい正則性があることを証明した。また、係数が多項式増大である場合については、数値解析の分野では,通常のtamed Euler-Maruama近似は真の解に収束しないことが知られている。そのため、tamed Euler-Maruyama近似と呼ばれる手法が近年注目されている。本研究では、当初この考え方を応用し、one-step tamed Euler-Maruyama近似を応用することで、確率密度関数のBesov正則性を証明していたが、密度関数の正則性を証明する際にはその必要はなく、通常のone-step Euler-Maruyama近似を適用しても正則性が証明できることがわかった。現在は,tamed Euler-Maruyama近似に対する確率密度関数の正則性についても考察しており、それを用いてmulti-level Monte Carlo methodなどの数値計算の効率化に応用ができないか研究中である。
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今後の研究の推進方策 |
Bessel過程の多次元化でもある非衝突確率過程の一般化について研究中である。特に非斉時的な場合の非衝突確率過程(係数が時間変数に依存する)に関して解の存在と一意性が証明できないか研究中である。1次元の場合は先行研究で非斉時的なBessel過程および非斉時的なHeston modelが研究されているが、これらは1次元であることを用いて比較定理や時間変更の方法が適用でき、非負値の解の存在と一意性が証明できる。一方で多次元の場合にはこのような方法は適用できない。そこで、研究実績の概要において述べた②の手法を用いて、負のモーメント評価を証明することで、非衝突性をもつ解の存在を証明する予定である。一方、解の一意性については、山田-渡辺の手法や局所時間による手法を応用することで、道ごとの一意性(つまり、強い解の一意性)を証明する予定である。その後、いつくかの離散近似手法を導入し、その精密な誤差評価を証明する。さらに、非衝突確率過程およびその離散近似の確率密度関数の正則性および可積分性についても研究を行う予定である。これについては、one-step Euler-Maruyama近似を基本とした手法を適用することで、Besov正則性を証明する。その応用としてmulti-level Monte Carlo methodなどの数値解析に応用する予定である。また近年、Multilevel Dyson Brownian motionと呼ばれるDyson Brownian motionの一般化である確率過程の研究が行われている。これはGelfand-Tsetlin coneに値をとる確率過程であり、弱い解の存在と一意性が知られている。今後の研究の方針として、この確率過程に対する道ごとの一意性および数値解析手法の導入し、その精密な誤差評価などを研究する予定である。
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