研究課題/領域番号 |
23K13000
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
|
研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
渡邉 天鵬 中部大学, 創発学術院, 特任助教 (50913282)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2027年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
|
キーワード | ランダムニュートン法 / ランダム力学系 / 複素力学系 / ロジスティック写像 |
研究開始時の研究の概要 |
ランダムネスを含む力学系に関する研究が近年盛んに行われています.代表者がこれまでに得た解析手法を応用し,未解決の問題を多く含む「乗法的ノイズ」のランダム力学系について具体的な解析と抽象的な理論研究とを行いたいと考えています.特にパラメータ依存性について調査し,分岐が起こるパラメータを定量的に決定することが一つの目標です.例えば,ロジスティック写像とニュートン法写像のランダム化を研究します.本研究により,例えば数理生物学や数値解析に革新的なモデルやアルゴリズムを提案できる可能性があると期待しています.
|
研究実績の概要 |
本研究課題の対象である「乗法的ノイズ」のランダム力学系について,本年度はランダム緩和ニュートン法と呼ばれる,求根アルゴリズムのランダム版について集中的に研究しました.その成果を,早稲田大学で開かれたThe 10th International Congress on Industrial and Applied Mathematicsならびに慶應義塾大学で開かれたKiPAS Dynamics Days 2023など,複数の国際研究集会において口頭発表しました.集会で面識を得たオスロ大学のTuyen Trung Truong氏もニュートン法のバリエーション(Backtracking New Q-Newton's methodと呼ばれている)を研究しており,その後の議論を通して,彼の研究グループと二本のプレプリントを共著で書きました.Truong氏らとの共同研究は当初想定していませんでしたが,予定以上に研究が進みました.本研究は数値解析分野に新しい(ランダム)アルゴリズムを提案することを一つの目標としていますので,その目標に向けて順調に進んでいるといえます. また,前年度に投稿していた「加法的ノイズ」ランダム複素力学系の分岐現象に関する論文がオンライン上で出版されました.本研究課題の乗法的ノイズ力学系は,当該論文で生み出した哲学をさらに発展させるものなので,この出版は本研究課題の進展に大きく好影響を与えます. また,本研究課題が機械学習と関連することが分かってきました.本研究は,複数のアトラクタがある力学系に,乗法的ノイズをかけるとどうなるかを研究対象としています.近年の機械学習では,高次元の空間上の力学系を扱いますが,学習や出力の際に様々なノイズが結果に影響を与えると思われます.本研究が高次元化できれば,機械学習にも応用が広がります.この考えは来年度以降に深めていく予定です.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画における「数値解析分野に新しいアルゴリズムを提案する」という目標を達成するために,本年度は様々な研究集会で口頭発表を行い,多くの専門家と議論を行いました.議論を通して今後の研究方針に新たな観点が追加され,今後一層深い研究ができると考えています.また,オスロ大学のTuyen氏の研究グループと,ニュートン法の改善という共通目的に向けて共同研究を行いました.本年度中に二編のプレプリントが完成したことを含め,当初の計画を大幅に超える進展をしています.
|
今後の研究の推進方策 |
専門家との議論により,ランダム緩和ニュートン法についてもう少し詳細な数値計算をした方が良いことが指摘されました.改めてプログラムを書き直し,より多くの情報を取得できるように改善する予定です.その計算結果が得られ次第,論文にまとめて国際誌へ投稿する予定です. また,加法的ノイズに関する論文出版後に,共同研究の申し出が複数ありました.これらは当初計画していた方針とは少し異なりますが,いずれも重要であるため,乗法的ノイズに拘らずに加法的ノイズに関する研究を行うことが考えられます.これらの研究を行うことにより,結果的に当初予定していた研究をより深く進めることに繋がります. また,本研究は複数のアトラクタがある力学系に,乗法的ノイズをかけるとどうなるかを研究対象としています.これを機械学習の視点から捉え直すと,学習の成功失敗を説明することに繋がる可能性があります.AIを用いた学習がなぜ成功するかを解明することは人類にとって重要な課題ですが,本研究がそれの手がかりになる可能性があります.
|